ひざ関節痛の話
今回は膝(ひざ)関節の痛みを解説します。
よく「人間は準備不足のままで直立歩行をするようになったから腰と膝に負担が掛かる」と言いますがこれは事実で、実に膝の痛みを訴えている人の80%以上は腰に原因があり、膝関節そのものに障害があることは少ないのです。
ですから、「膝が痛いのだからそこへ鍼をしてくれ!」と譲らない人がいますが、例えば脳溢血の場合のように麻痺を起こしているのは確かに手足でも原因は頭であるというように、施術を行うことは重要でも気やすめ程度にしかならないのです(肘関節の治療でも同じようなことが言えます)。
では、腰からくる原因とは?
先ほど「人間は準備不足のままで直立歩行を始めた」と書きましたが、そのツケが腰と膝関節に回ってきているのです。
「ダルマ落とし」というオモチャを想像してみてください。上手に一番下をハンマーで勢いよく叩けば全体がバランスを保って一段ずつ落ちるというゲームですが、下手だと崩れてしまいます。これを人間の身体に置き換えると、ダルマは頭であり積木が背骨になりますが、人間は生き物ですからバランスが崩れたからといって簡単にダルマを落としてゲームオーバーにする訳には行きません。バランスの狂いを各部分が逆方向にズレて全体で影響を吸収するのです。腰が弱い原因はこのような理由によります。
その背骨の狂いを更に下の足が支えているのですが、最も下部の足首はアーチ型をしているので障害を受けにくいのに対し、膝は不完全な構造のために障害を受けやすいのです。
悪く言えば「膝が悪いということは、上半身のバランスはかなり崩れている」ということですね。
正座をしたいのですが?
膝関節の痛みを訴えてこられる人の中には「歩くのは勿論なのですが、是非とも正座ができるようにしてください」と訴えられるケースが少なくありません。しかし「変形性膝関節症」、それも「老人性の」と診断された方には残念ながら気安く返事ができないのです。
もう少し膝関節の構造を解説しますと、実は螺旋(らせん)関節という種類のもので直角までは普通に曲がった後に螺旋状に横滑りすることで折り曲げを可能にしているのです。従っていわゆる膝の「お皿」は、筋肉の中にある種子骨(余分な骨という意味)で厳密には膝関節には参加をしていないのですが、螺旋運動から骨が飛び出さないように用心棒の役目をしているのです。
ですから、膝関節が変形をしている(概ね関節が外か内の横方向に大きくなっている)ということは、螺旋運動(横滑り)にブレーキが掛かるということですので正座ができないのです。
確かに正座は行儀もいいし腰の為には良い姿勢が保てるのですが膝には負担であり、膝を伸ばして座ると今度は膝には良くても腰に負担が掛かります。寝て暮らすのが最も良いことになりますが、それでは話しにならないので、結局は椅子に腰掛けるのが一般的に安全で実用的ということです。痛みがあるのに無理に正座をしないでください。
膝の水を抜くといいますが?
膝の水を抜くと言いますが、どうして水が溜まるのでしょうか?あれは膝関節が炎症を起こしているからです。つまり、火事の時に消火活動をしている消防車みたいなものです。火事現場に消防車が集まれば付近の交通は渋滞をしますが(膝の痛みと同じです)、使ってはいけない状態だから痛みが発生しているのです。それなのに水を抜くということは、消防車を強制排除するようなもので確かに交通渋滞を緩和(痛みを緩和)出来ますが火事はどんどんひどくなって、結局は治らなくなってしまいます。科学的検査でも水を抜くことで数パーセントの関節機能の消失を招いているのです。炎症が治まれば自然に水はなくなります。
膝関節の治療はどうすればいい?
サポーターなどで補強をすることは悪化をさせない秘訣です。半月盤など重大な関節そのものの損傷も考えられますから、素人判断をせずにまずは診察を受けることが大切です。そして、一般的な養生は勿論ですが「あなた自身」が病気に立ち向かう気力が最も大切なのです。
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