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マニュアル(鍼灸は真救)

 

 東洋はり医学会機関誌の平成2年10月号には「鍼灸人は真救人」との表題の巻頭言が掲載されています。何も鍼灸だけが人類を救う唯一の方法だという訳ではありませんが、最近の医療行政を見ても真救人に最も近いのは私の行っている脉診流(みゃくしんりゅう)鍼灸術は間違いないと思っています。いわゆるテレビで出てくる長い鍼を身体深くへ突き刺すような施術は一切行っておらず、経絡(けいらく)の調整を主目的とした全身治療を行っています。その中核に脉診があるというのが概要です。

 治療をするのにも段々があって「直・治・癒」と勝手に呼んでいますが、本来なら患者さんは皆“癒されなければならない”はずなのですが、治療側・患者さん側の双方の社会状況からなかなかそこまではたどり着けていません。しかし、最も広く行われいつの間にか当り前のデカイ顔をしているその場限りの“寸法直し”的対症療法では絶対にいけないと思います。残念ながら私も「その場限りの対症療法」を学校で嫌というほど習い知っているのですが使いたくないのです。せめて症状が再発生してもある程度は自力回復のできる“治癒”にまで導かねばならないと思い増す。

 アシストをお願いするのに基本的なマニュアルは作成しましたが、あくまでも基本であります。例えば重症患者さんの治療中などは気が立って時々恐く映るかもしれませんので、そんな時こそ「真救人」の一人であるという自覚を持って対処して欲しいと思います。

 

★予約の決め方

 基本的には次の予約指示を必ず出しますので、まずは今回と同じ時間を尋ねてみて下さい。特に土曜日は自力では来院できず送迎の必要なケースがありますから、土曜日しか来院できない患者さんが多いものです。ですから、「週に1回」の指示にはまずは同じ曜日を尋ねてみて下さい(都合が悪ければ違う曜日や時間帯を患者さんの方から申し出られます)。「週に2回」の指示には前半(月火水)と後半(木金土)とバランスが取れるようにします。

 時間は続けるようにする → 白紙に近い状態ではまず患者さんの都合を聞くのですが、例えば既に10:00に予約があったとしたなら、次の患者さんには「9:30か10:30のどちらがいいですか」となるべく続けるように時間設定をします。仕事の能率から言っても患者さんの受ける安心感からもその方がいいのです。現在はベッド数が増えましたので予約ノートを縦だけでなく横でも考える必要がありますけど、どちらにしてもある程度まとめて予約を入れていく必要があります。

 小児鍼(小学六年生まで)には予約が不要です。電話で子供の治療をという質問があったなら診療時間内の来院であれば予約不要であると対処して頂いて構いません。また症状などを尋ねられるようであれば、電話を替わって頂いた方が無難です。

 キャンセルの連絡があった場合 → これが一番大切です。人間は適当に回復すれば悪かったところなど忘れて「これで当り前」と自分を過信してしまう動物なので、必ず次の変更予約を取ります。ただ「遠くへ出かけることになった」などと表現する人は嘘・本当に係わらず深く追求しない方が過去の体験からはいいみたいです。変更後の予約が取れればそのまま処理して頂いて結構ですけど、変更後の予約が「分からない」とか「またこちらから電話をする」という話の場合には理由のいずれにかかわらず適当に処理せず、必ず一度電話を保留にしてキャンセル処理でいいのかを尋ねてください。

 予約人数について →  予約ノートで規制の入る部分はあらかじめ斜線などをしておきますけど、基本は正時には3人、30分時も3人です。午前中は「当日枠」ということで、必ず二つの枠は空白にしておいてください(早朝の方は全て埋めて十時台や十一時台に二つ枠が空けられれば当日枠は柔軟で構いません)。ただし、新患さんはカルテ作成や初診時の問診に時間が掛かるので8:45の枠に入れないように注意してください。午後には当日枠を設定する必要はありません。もし時間枠が一杯になっているがそれでも予約を入れて欲しいといわれた時には、第六感も使いながらその場で判断をしますので相談してください。

 

現金の授受について

 必ず復唱をする → お金でトラブルが発生すると取り返しがつきませんから、常に細心の注意をして慎重に扱ってください。

 例えば「○○円確かにいただきました」.「○○円お預かりいたします、○○円のお返しです」等、ハッキリした口調と声で面倒臭いくらいに確認を取ってください。又、大切なものですから必ず立って授受をしましょう。

 高額な紙幣を出された場合は相手に確認のために再度見せてから金庫に収納しましょう。小銭での場合はその場で確認し「確かにありました」とハッキリ伝えてあげましょう。

 保管は整理整頓して → 硬貨でのおつりは500円を原則とし、支払われた硬貨はそれぞれの硬貨コーナーに入れてください。お札は向きと方向を揃えて保管し、1万円札は5千円札の最下層に入れて間違わないようにしてください。

 因みに現在の料金は、初診3000円、以後2500円、小児鍼1000円、証明書1000円です。自動車賠償保険は請求後払い(この患者さんについては事前にお知らせします)。 初診時にはパンフレットを渡すことになっていますから、簡単な説明をしながら渡してあげてください。

 

ノートの記入方法

 プライバシーを守る →  患者さんはこちらを信頼してカルテへ個人情報を出してくれているのですから、できるだけ漏らしてはいけません(守秘義務)。

 新患さんの場合には左上に丸を付けておいて最初は鉛筆記入とし、後から黒ペンでのフルネームに直してください。

 珍しい姓はそれだけでどこの人か分かってしまいますからノートは普段から極力閉じ、また患者さんにも見られないようにしてください。

 予約の取り方とも重複することですが、指示された予約に対してまずは卓上カレンダーを提示して患者さんにスケジュールを確認してもらい、予約を決定します。記入漏れを防ぐため先にノートへ記入し、その後にカードへの記入の順番とします。ノートは変更のことを考えて枠一杯の大きな文字とはせず、半分程度としておくのが無難です。

 オーバーブッキングを防ぐため、あるいは消し忘れを防ぐため予約ノートへの記入は即座に行ってください。変更の電話があった場合、まずは元々の予約を垢ペンですぐ消します。消し忘れは結構発生するミスなので、これは絶対に後回しにはしないでください。何かの用事が重なって新たな記入を後回しにすることも、ミスしやすいことなのでできる限り避けてください。

 

カードの記入方法

 名前、年度、No.、治・管(治療と健康管理の意味)の別、次回の日時を記入しますが、以前は領収書発行のために回数をきっちり整理するようにしていたものの、今は電子カルテで回数はこちら側で正確に把握できますから、予約カードを忘れられてきても優しく対処してあげてください。

 また複数回の予約をまとめて取られた場合、混乱を避けるために次回文のみをカードには記入してください。「ノートにはその次の分も記載してありますけど間違わないようにしておきました」のような声かけがあると、よりいいですね。

 予約カードには2種類あります → 基本的には緑のカードで小児鍼以外の全員に発行してください。その他に忘れた時用の単発の白いカードがありますが、字が大きいのでそちらを求められる場合があります。

 団体様の場合 → 予約は当然固めて、ノートには人数分記入しますがカード側はスタート時間に統一しておきます。まだ経験の浅かった頃の出来事ですが、同じ時間枠で入りきらなかったので次の枠へとまたがってしまい、ノートに合わせてそのまま時間をカードにも記入していたなら運転手の分が後ろ枠の方になっていて、それを見て来院されましたから団体ごと遅い到着となり大混雑になってしまいました。予約をまとめて数回取られた場合も同じことで、混乱を避けるために次回のみ記入します。

 領収書については、治療終了時に一括したものを発行するケースの方が多いのですが、毎回発行して欲しいという要望の場合には複写式ではない方で発効をしてください。予約ノートに領収書の印を付けるようにして、あらかじめ準備できるようにもしておきます。

 

情報は整理をする

 情報というものは、ねじ曲げてはいけませんが整理をすればいいのです。例えば新患さんから道順を尋ねられた時、「どちらの方面から何で来られますか?」と質問を投げ返すことで情報の整理をしてしまえばいいのです。この場合だと米原方面から電車でとか近江八幡から自動車でという答えが戻ってきますから、これだけでいちいち聞いていると煩雑になってしまうばかりの情報が一気に整理されます。ちっとも話を聞いていないタイプの人でも「もう一度聞きますけどどちらの方面から何で来られますか?」と整理方法を確実に指示して、こちら側で話の流れをコントロールできるようにすることが肝心です。

 電話での予約を申し込まれた時も、「午前と午後のどちらがいいですか」「早い時間と遅い時間ではどちらがいいですか」とこちら側で絞り込んでいけば混乱がないだけでなく、話そのものがスマートになります。「今日は水曜日ですから午前中のみの診療となりますけど」「今日は先生が研修会へ午後から出かけられるのでお昼休みなしで14:00までの受付になっています」と、条件付きの診療日には前置きするのが効果的です。また、希望の時間枠が既に満杯だったなら「申し訳ありませんがその時間は既に予約が埋まっているのでこちらの時間帯ではいかがですか」と、この場合でも先に整理をした上で次の選択肢を提示していけば混乱がありません。

 学会などで臨時休診をすることがありますが、この時には「その日は研修会でお休みをいただきますので」と先に前置きをしてしまえば相手は納得せざるを得なくなります。前置きすることで煩雑にならないようにすることも、情報の整理です。

 一番ダメなやり方は、整理方法を提示しないこともそうですが情報過多になっていることです。「朝だと早い時間ならここで遅い時間ならこっちで最後だとそこで」「午前もありますが午後ならこっちでも予約していただけますけど」のような話し方は、相手にとって不必要な情報の方を多く届けてしまっていますから、情報過多というのは混乱を招くだけです。情報をねじ曲げている一歩手前ですね。インターネットのニュースならいくつかを見比べて自分に必要なものを取捨選択するという作業になるのですけど、患者さんの目的は治療をして回復することであり病気の解説以外はスマッシュヒットの情報が最適だと思われます。

 

その他

 大切なことは貴方も大きな意味で治療に参加しているということです → 特に難しい要求ではありません。患者さんは病気で辛く苦しんで落ち込んでいますから、貴方が明るく電話を受けて明るく会話をしてあげればそれだけで病気の回復の一歩になるのです。だから漫才のようでも好きなだけ患者さんと明るく話をしてもらって結構です。友達になって結構です(但し、向こうが恋心を持ってもこちらは最低治療中は恋心を持ってはいけません)。後は普通です、整理・整頓・清掃・清潔に少し注意して下さい。

 仕事をする以上いろいろと不満な点も出てくることでしょう。私の治療に対する考え方(ステイタス)以外はどんどん意見をしてください。

 


 

付録1   パニックについて

 パニックというのは一種の精神興奮状態です。平たく表現すれば、慌てて自分自身を見失っている状態のことです。自分自身を見失っているために通常なら考えられない奇妙な行動をしてしまうことが特徴で、判断力が極端に落ちている証拠です。同じ人種のパニックに陥りやすい周囲の人へ伝染・拡散させてしまうという困った特性があり、パンデミック(大流行)になることさえあります。例えば大地震が発生したなら「動物園からライオンなど猛獣が逃げた」というデマが必ず流れるのですけど、あり得ない話を信じて行動にまで移してしまうようなことです。

 「精神という海を愚者はおぼれ賢者は泳ぐ」といわれるのですけど、パニックへ陥っていることを大半の人は理解ができるのに制御をしていないだけなのです。私が小学生の時に勝手に琵琶湖に泳ぎに出かけて、おぼれてしまいものすごく慌てました。まさにパニック状態であり、それまでの短い人生の回顧録映画さえ始まってきましたね(笑)。必死にもがきますから身体が水中で回転しており、太陽の光も何度か目に入ったのですけどそれでも慌てているのでどの方向が水面なのか分からないのです。では、どうやって助かったかなのですけどもがき続けても無駄だと直感したので運動を一度止め、口から息を吐きできた泡は浮上していきますから、これにくっついていって水面に出たのです(多分しばらく前に見ていたテレビのことを実行しただけなのですが、それでも何とも生意気な発想をするガキですね)。

 しかし、口から吐いた息で泡を作るかどうかは別として、パニックから抜け出す最善の方法は「今パニックに陥っている」と自分で自分に言い聞かせることなのです。「今パニックになっている」と自分のことを見つめることで自覚が戻り、判断力を取り戻せるのです。「精神という海を愚者はおぼれ賢者は泳ぐ」というのは、常に自覚が維持できているかどうかということなのです。

 鍼灸院では一度に情報が入ってきて同時に複数の指示でこなして行かねばならないということが、よくあります。三台のベッドがほぼ同時に入れ替えとなり、そこへ電話があって小児鍼もあって待合室の人からの要望もでているなどですね。このような時に優先順位を付けて順番にあるいは並行にと情報の流れを自分で整理していただければ完璧ですが、オーバーヒートしてしまいコミュニケーションがメチャクチャになっているのがパニックです。当然、仕事の手も止まってしまうでしょう。余計に慌ててしまい、周囲の人を巻き込んでいたということが、過去には実際にありました。そのような時には、「今パニックに陥っている」と自分に言い聞かせてください。

 

付録2 ミスをした時には?

 誰でも必ずミスはするものです。その時に大切なことは、直ちに報告をして対処法をすぐ一緒に考えることです。例えば予約が二重になってベッド数よりも患者さんが来院されたオーバーブッキングを引き起こしてしまったなら、受付業務ではどうしようもないのですから勝手に自分の中だけで処理をしようとしないことです。

 うっかりや不注意からのケアレスミスをする人は、必ず繰り返しをしています。単純作業を繰り返していると200回に一度くらいの割合で単純ミスをするといわれているのですけど、ケアレスミスをする人は自分が不注意な性格だということに気付いていないのですからケアレスミスを繰り返すのです。ケアレスミスを克服する方法は一つ、ケアレスミスを発生させた時に指摘してもらうことに加えて「自分はケアレスミスをしている人だ」と何度も何度も言い聞かせることです。自分の不注意さに気が付くまで、繰り返すのが克服をする方法であり、それしかありません。

 失敗が発生した時の反応について、こちらも人間ですからその日の状況によって反応レベルが多少上下することはあるでしょうがそれでは気紛れになりますから基準線を設けています。一所懸命にやったのに失敗をしても、それは必死にやった結果なのですから怒っても仕方がないので不問にしますけど、いい加減なことでの失敗は小さなことであっても見逃すことができません。 これは私自身が下積み修行へ入った時に示されたことであり、「にき鍼灸院」で下積み修行をした助手たちには必ず言い渡してきたことであり、それだけ患者さんへの態度は徹底させています。治療現場でこれが徹底していないと技術は身に付くものではなく、ベッドサイドの技術はそのくらい鋭いものを実はやっています。

 具体例を書くと、脱衣かごから離れたところに落とし物があり結果的に忘れ物になってしまいました。治療後のベッドメイキングでは忘れ物確認が最優先なのですけど、決められた手順で見ていたのに発見できなかったのは一所懸命だったのに対処できなかったことですから仕方ないのですけど、ちら見だけしかしていなかったならいい加減な対応ですから見逃せません。結果的に充分な治療効果が発揮されなかった・結果的にオーバーブッキング状態になったなど、結果は同じでもそれまでを一所懸命に対処していたかいい加減だったかでその後は大きく変わってしまいます。うちの子供たちにも、この基準線は宣言をしています。

 

付録3 カルテ管理をしているパソコンについて

 電子カルテを走らせているパソコンには、スクリーンリーダーを組み込んであります。しかし、電子カルテソフトは音声を停止させるだけで普通に使えますからポーズキーの位置だけ覚えていただければ大丈夫です。使用後は、必ず音声が出るように戻してください。またこの電子カルテ管理ソフトはマウスでの操作にも対応しているものの、基本的にはキーボードのみでの操作が前提であり、キーボードを使った方が早く移動などができます。新患さんの個人情報の登録時、できればキーボード操作を習得された方がいいです。

 私はかな入力を基本としているので、ローマ字入力をされるなら切り替えが必要です。キーボードショートカットは、左オルトとひらがな/カタカナキー、つまりスペースキーの二つずつ隣のキーを同時に押します。これはWindowsの標準機能なので、他のパソコンでも共通に使えます。使い終わったなら、また同じ操作でかな入力へ戻しておいてください。

 これもWindowsの標準キー操作ですが、コントロール+Cはコピーでコントロール+Vは貼り付けです。個人情報で紹介者の欄は、紹介者のカルテを検索しそこからのコピーと貼り付けで対処してください。また個人データが完成したなら、必ず「2.患者さんのデータを開く」から一度呼び出して正しく登録できているかどうかを確認してください。また活用できればと言う話ですが、クリップボード拡張ツールが入っているので、連続コピーも記録されています。コントロール+オルト+シフト+Uで呼び出せます。

 カルテ管理ソフトに内蔵されている郵便番号辞書が若干古く、そのままだと住所が変換されないことがあります。手書きで対応できる範囲なら直接に治して頂いて結構ですが、別ソフトで変換することもできます。スタートメニューから「4.新郵便番号サーチ」を選び、七桁の郵便番号を打ち込んで検索をします。結果がリスト表示されたならキーボードかマウスでハイライト(白黒反転の状態)させ、"CLIP"でクリップボードにコピーをします。後は住所欄へ貼り付けて余分な文字を消してください。

 

 【参考】体位変換時の専門用語ですが、「腹臥位(ふくがい)」はうつ伏せのことでバストマットにタオルをかぶせてから寝てもらってください。「横臥位(おうがい)は横向けのことで、左右どちらでも好きな方向で構いません。「楽な方で」と指示した時には、腹臥位か横臥位かを患者さんに選択してもらいます。ちなみに横向けの解剖学での正式な言葉は「側臥委」で、「横臥位」は鍼灸業界の一部で通じているイメージから出てきた村言葉ですから、他の素人さんには話されない方がいいです。



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