骨折の話も含んでいます

なかなか治らない捻挫について

 「この捻挫がかなり前からなんですけど、一向に痛みが取れなくて」という相談を受けることがあります。 捻挫というのはご存じと思いますけど、典型的なものは転倒しそうになって足首の関節が思い切り引き延ばされてしまい、その後に腫れや痛みを残している症状のことですね。理論上は関節なら全身のどこでも捻挫が発生するのですけど、足首・手首・膝・首に発生しやすいものです。ぎっくり腰も腰椎の捻挫を伴っているのですが、実際にはほとんど筋肉症状なのでこのパンフレットでは除外します。

 

もう少し、具体的な解説

 筆者が学生時代の実技授業中に、「捻挫とは瞬間脱臼のこと」と説明してもらったのを、今でもよく覚えています。「なるほど関節が思い切り引き延ばされて骨と骨が瞬間的に離れるのだから、元に戻っても色々と不都合がでてくるんだ!」と、指の下側に触れている関節のことがよく分かったような気がしました。医学的には少々違っているのですけど、素人さんはそのように理解されていて構わないと思います。

 でも、正しい知識についても記載しておきますね。捻挫とは、文字通り関節を「捻り挫く(ねじりくじく)」事を言います。捻挫は、関節が可動域以上の運動を強要されることによって起こり、関節周囲の軟部組織の損傷を伴うことになります。そのため患部に熱感や腫脹、痛みなど炎症症状が発生します。時には骨折や靭帯断裂を伴う事があり、放置すると運動障害や関節の軸変形に繋がることになってしまいます。

 つまり、炎症があるのですから捻挫を起こした直後には患部を冷やすのがよく、なるべく固定をします。そして非常に軽いものであれば自然回復をするのですけど、痛みがそれなりに強い場合には速やかに専門家への受診が最適な処置法となります。「関節が少し変な動きをするようになってしまった」「力を入れた時だけだが痛みを必ず感じる」「ある動きだけはできない」などはよく聞く話ですけど、これらは関節の軸変形が原因のほとんどでしょうから、症状が固定する前に受診されることです。

 

様々な捻挫

 足首の次に有名なのは、いわゆる「むち打ち」で首の捻挫です。受傷直後ではなくしばらくしてから症状が出て来るというのは、周囲の軟部組織が小さいので炎症を起こしていても最初は神経圧迫になっていないだけで、その後に圧迫が始まってくるからです。初期では首を固定することも有効ですが、基本は軟部組織の炎症を停止させることであり、マッサージや牽引など患部へのアプローチは逆効果になりやすいものです。全身治療が基本です。

 次に遭遇しやすいのが、走ったり飛んだ時に膝へ痛みが走ったケースです。外力から突然に痛みが発生したもので、元々から膝に違和感などがあったものとは区別します。大きな関節に痛みが走るということはそれだけ衝撃が大きかったということで、半月板や靱帯損傷を伴うケースが非常に多く、自然回復はありませんから必ず専門家を受診してください。

 診断が微妙なのは手首で、外力により突然発生したものは骨折がなければ局所的刺激で関節の循環を改善させればほとんどが治ります。これは「突き指」も同じことなので、指を引っ張るというのは間違いですから絶対に行わないように。当院では『瀉法鍼』という特殊な道具がありますので、すぐ対処できます。ところが一般に「腱鞘炎」といわれているものは、原因が肩甲骨周囲の凝りによる神経圧迫であり、手首は何ともないのです。投影痛というのですけど、西洋医学にはない概念なので混乱の元になっています。

 

足首の捻挫?剥離骨折?

 「えっ!嘘!骨折!」という反応を当院では実はよく聞きます。骨に異常が発生すると、まずその周囲が腫れ上がってきて次に何もしていなくても疼くようになります。骨の異常を簡便で確実に診断する方法は、少し離れた箇所から打診をして痛む箇所が響くかどうかです。小さな亀裂骨折(俗に言う骨にひびが入ったもの)だとレントゲンでは見落とされてしまうケースが多いのですけど、打診であれば確実に判断ができます。

 ここで、冒頭に書いた一向に痛みの取れない足首の捻挫についてです。結論から書くと捻挫だけではなく、剥離骨折も発生しています。足首周囲の靱帯はとても太く強靱で、これによって体重を支えて二足歩行できるアーチ型を形成しています。ということは、足首の靱帯は骨よりも重要な役目をしているので思い切り引き延ばされたなら、靱帯は切断されず骨がはがれて靱帯へくっつく形で、被害を最小限に食い止める構造になっています。

 しかし、はがれるという形であっても骨折は骨折です。放置するだけでの回復は、あり得ません。ですから、何年経過しても力を入れると必ず痛むという症状になります。

 そこで先程も出てきた『瀉法鍼』という道具を当院では用います。漢方での気血津液でも、血に直接アプローチのできる特殊道具であり、強引に血を動かすことによって骨折の回復ができます。それも「ていしん」の全く感じない施術に比べて、刺激がやや強い程度のものです。その他に肋骨骨折など単純骨折なら、ギブス固定することなく回復させることができています。

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