スポーツ障害について

肉離れの解説をします

 肉離れというものは激しいスポーツをしている時だけのものではなく、朝のラジオ体操の途中に発生したり、普通に歩いていて足が引き延ばされたり階段を踏み外しそうになった時にも発生したりと、実は日常生活でよく遭遇しているものです。ほとんどは足の筋肉に発生しますが、肋骨の周囲や腕の筋肉にも発生することがあります。

 しかし、肉離れの実体についてはあまり知られていませんし、その治療法についてはもっと知られていません。捻挫の親戚くらいに思われているかも知れませんけど、捻挫の場合は保存療法により自然回復するケースがあるのに対して、肉離れは決して自然には回復しない症状なのです。

 

筆者の体験から発見!

 実は筆者の体験なのですけど、バタフライという椅子に座った姿勢で大胸筋を鍛えるウェートトレーニングマシンの重量を「早く胸囲を大きくしてやろう」と思い切り重たくしてやっていました。ふと気を抜いた時、あまりの重量に胸の前で合わせていた腕が振り払われるように外側へはじき飛ばされてしまい、咄嗟の判断で右側だけを犠牲にしたのですけど三角筋の肉離れが発生してしまい、そこから何ヶ月も肩関節痛に苦しむこととなりました。この自分の体験から、肉離れは繊維の垂直方向にできる溝として触知できることを発見しました。

 ちなみに、この肩関節痛なのですけど、大胸筋を鍛えていたのですから最終的には大胸筋の治療が必要でした。この経験から、温まってくると腕が挙げられるようになる肩関節痛は原因が実は大胸筋にあるという認識となり、ラケットを使うスポーツの選手が肩関節痛を訴える場合には一番に確認しており、かなりのケースが該当しています。90%は大胸筋の治療のみで回復しています。

 

もう少し専門的に

 肉離れとは、急激に筋肉が収縮した結果、筋膜や筋線維の一部が損傷してしまったことをいいます。完全に断裂するケースとは異なります。

 これも筆者の体験なのですが、同じくウェートトレーニングでレッグカールという、うつ伏せに寝ながら膝を曲げて大腿部の後側(ハムストリングス)を鍛えていました。いい加減な知識でトレーニングをしていたのが裏目に出て、重量に耐えきれず膝を曲げている途中で足が延ばされてしまい右足の大腿部内側に強い痛みが発生しました。この二つの経験から、トレーニング法はしっかり勉強するようになりました。

 しかし、強い痛みはあるものの足は普通に動きます。人体実験大好きですから試してみたところ、ランニングをすることも泳ぐことも直後からできたのです。「肉離れ」というと、筋肉が完全に動かなくなることで痛みがあっても動くものは単なる筋肉痛のように考えておられる人が多いのですけど、完全に動かなくなるものは筋断列であり、これは手術が必要になります。

 筋肉というのは細かな繊維の集まりなので、細い糸が何本も何本も集まって大綱になっているようなイメージをしていただけると理解しやすいと思います。ただ、繊維はお互いに連絡をしているのですが絡み合うことはなく、一定方向に走っています。この細かな繊維同士の連絡に外からの力で亀裂が入ってしまったものが「肉離れ」であり、そのため繊維の垂直方向にできる溝として触知できるのです。ですから、筋肉という大綱そのものが切れてしまったのではなく連絡をしている部分もかなりは残っているので、痛みはあっても動作は何とかできるのです。

 言い換えれば繊維の方向に対して垂直に傷が発生するのが肉離れで、水平に発生するのが断裂です。指がはまるほど傷が発生しても動かせるのが肉離れで、動かなくなるのが断裂です。ただし、アキレス腱だけは太すぎるので方向に関係なく部分断裂や完全断裂になります。

 

治療は、どうするの?

 西洋医学での好成績だという治療法を、筆者は知りません。保存をして痛みが軽くなるのを待つか、スポーツテーピングではない治療用テーピングが主です。けれどテーピングはピッタリ筋肉の走り方に合わせて張らねばならないので、理論的には正しくても実際には実行できているものを見たことがありません。脉(みゃく)を堅くして、回復を阻害していたものがあるくらいです。

 肉離れの治療は原理的には繊維同士の連絡を元通りにしてやればいいのであり、お互いにどのようにして手を伸ばせば隣と再び手を握れるようになるのかが分からなくなっている繊維に対して、信号を送ってやればいいのです。 当院では瀉法鍼という特殊な道具を用います。東洋医学では身体の構成要素を気血津液として捉える考え方があり、このうち物理的要素に多く該当する血を強制的に動かせる道具です。つまり、強制的に繊維同士に手をつながせることができます。

 肉離れの上下の端から、中心へ向かって交互に瀉法鍼を行います。肉離れには長さと深さの問題もあるので、深いものに対しては治療回数が必要になります。また痛みが強い場合には、溝の中心に円皮鍼で痛み止めをすることがあります。これらの治療で、肉離れが回復しなかった例はありません。

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