外風池(そとふうち)穴の応用

No.1 外風池(そとふうち)穴の設定

滋賀県  二木 清文

 

1.はじめに(論文の概要)

筆者は本誌19985月号と9月号に「帯脈流注治療」とその延長で「下秩辺」を展開させていただきました。様々な反応が寄せられたことは執筆者として何よりの喜びでした。そこで改めて感じたことは、流注の大切さと病理の大切さでした。

ところで,考えてみれば人体はそれほど広大な表面積ではないのですから、間違いも含めれば「帯脈流注治療」にせよ「下秩辺」も、長い鍼灸の歴史では筆者の刺鍼が史上初ではなかったでしょう。筆者が強調したいことは、理論的解明が先(これは6月号の「花粉症の治療」に当たります)でも、偶然による発想でも『学術と手法が互いにスクラムを組んだような普遍的な体系に育て上げる』ことが大切だと思うのです。

話が少し反れるようですが、「鍼灸は科学的ではない」という世間からの批判に対して、あるいは「古典治療と言っても概念の遊びによる空論」という鍼灸業界内部からの批判に対しても、福島弘道先生は「客観性・再現性・普遍妥当性の三つがそろえば立派な科学である」と常々おっしゃられていました。大切な発想は手技と理論の両面を兼ね備えさせて育て上げることで、客観性・再現性・普遍妥当性を備えさせると言うことになり、筆者は脉診を中心とする伝統鍼灸(経絡治療)を臨床実践しているのですが、(経絡治療家は口をそろえて言うことですが)個人芸を披露しようと言うのではなく、科学的な鍼灸発達の一助となればと思っているのですが、思い上がりでしょうか?

この原稿中で私が「外風池」と治療点を命名しましたが既に活用をされている先生方がおられるかも知れません。(筆者の調べた限りでは見つからなかったのですが)発表がなされているかも知れません。しかし、今までと違うところは治療点に留まっていたものを病理解釈を行い、延長応用を実験実証した報告です。

大上段に構えてしまったので話を元に戻し、今回の主旨を簡単にまとめます。表題の外風池と名付けた治療点と臨床応用の提案なのですが、外風池は胆経ではなく三焦経だと気付いたことと病理解釈、それに対する主に脉診を用いた検証実験を報告し治験例を付属させました。検証実験を追試して頂くには脉診の基本が必要ですから、若干の脉診に対する意見と独自修練法を紹介します。これを一本の原稿にまとめてしまうと焦点がボケてしまいますので、No.1では外風池の発想から取穴法と初期の治験を紹介し、No.2において脉診の独自修練法と検証実験について記し、その上で更なる応用を考察したいと思います。

 

2.外風池の発想

先に結論を書いてしまうと、完骨穴の上方で分解後線の外端部分を治療点として活用するもので単純なものですが、実はこの治療点は胆経ではなく三焦経の流注上にあるのです。それ故に刺鍼にも病理からも注意点があります。

  2.1 偶然の発想

きっかけはセンター試験直前の女子高生の歯痛でした。受験勉強も歯痛ではどうにもならず時間を惜しみながらも歯医者へは通ったのですが何ともないと言うことで服薬しても痛みは止まらず、「肩こりではないのか」と母親に勧められ渋々顔での来院。脉は浮数でやや。右を治療側に脾虚肝実証で治療。肩こりと言うよりは首こりで舌下腺も腫れていましたが後頸部のリンパ節も腫れているので仰臥位のまま天柱と風池に置鍼しました。すると本治法で既に半分にまで鎮静していた痛みが五分ほどで完全に消失し、その後も痛みは再発せず三回で完治。

この治験で自信を得てその後に歯痛を訴える患者の後頸部を確認すると痛みの程度に比例して風池を中心にリンパ節が腫れ、歯痛には仰臥位で風池やその外側の反応点に刺鍼することで確実に緩解できることが判明し追試の最中、その日で治療終了予定のムチ打ちの患者(二十二才の女性)が、数日前からの虫歯による断続的な激痛でベッド上を転げ回り始めました。ピリン系の薬が飲めない体質であることは聞いていましたから、この激痛は絶対に止めなければなりません。本治法と一連の治療の後で仰臥位で風池付近の硬結を緩めて改善は得たのですが、夜間を我慢出来るほどでは到底なく大腸経の井穴刺絡なども試みましたが決め手ではありません。この時点で胸の熱を探ってみると熱いままです。もう一度後頸部を探ると、完骨の上方で分解後線の外端にハッキリした硬結が触れます。助手に脉を観察するように命じて慎重に静かに刺鍼すると、深部の抵抗が取れて間もなく「急に脉が柔らかくなりました」の報告があり、歯痛も消失し胸の熱も引いていました(歯医者に行ってくれた五日後まで痛みは全く再発しませんでした)。「この治療点は特別ではないのか」と直感したのでした。

その後もこの治療点の刺鍼中には脉が急激に柔らかくなることが必ず報告され、その鍼響《中医学で表現される得気》は遠隔部(頭頂部や肩胛間部に止まらず上肢や時には下肢)の愁訴部へ著明に伝搬することが自らの刺鍼でも確認されました。外風池の誕生です。

 【安直な命名】著明な効果が得られることと胸の熱が取れることに加え、素人でも判断できるほど脉が急激に柔らかくなる現象はこの治療点に絞って研究をすべきと判断し、発想のきっかけが風池付近に対する施術であったことから『外風池(そとふうち)』と安直に命名してしまいました。

出端昭夫先生は「下風池」と文字通り風池の下方の著明な反応を治療点として用いておられることを紹介され、他にも後頸部には反応が多いので様々な名称で治療点として報告がされています。阿是穴だと言ってしまえば身もフタもありませんが、「外風池」が違うところは病理解釈から延長応用が可能になっている点です。従って部位を現すには上完骨の方が適切でしょうし三焦経上に位置していると主張しているのですから「外風池」の名称は不適切かも知れませんが、風池という名穴の名前を借りてインパクトが強いことと臨床で慣れてしまいましたから「どうしても」というクレームがなければ、このまま「外風池」の名称で呼ばせてください。

 

3.取穴方法

では、具体的な取穴方法ですが、余計なお世話ながら判りやすいように風池と完骨についても記載し比較をしました。なか⑴は本間祥白著、鈴木速司校訂「鍼灸実用経穴学」(改訂版)、⑵は教科書執筆症委員会著「経絡経穴概論」からの引用です。両書では部位の表現こそ異なっていますが取穴してみれば全く同じ場所と確認しました。但し、神経や筋肉が若干違っている点が気になるところではありますが。

 3.1 風池

⑴部位は後頭部脳空の下方の髪際、僧帽筋と胸鎖乳突筋に起止腱の陥凹部。取り方は後頸部髪際で脳空(外後頭隆起の外方、上恒線の直上正中腺の外方約二横指半のところ)の下方、乳様突起の内方陥凹部で僧帽筋と胸鎖乳突筋との間に当たるところに取る。天柱穴(後窩の外方二横指)の外方七・八分のところに相当する。筋肉=頚腸筋・僧帽筋と胸鎖乳突筋の間、血管=後頭動静脈、神経=小後頭神経・大後頭神経・頚神経前枝の筋枝。

⑵部位は乳様突起下端とG門穴との中間で後髪際陥凹部(僧帽筋と胸鎖乳突筋の筋間の陥凹部髪際にある、古書には「之を按ずれば耳中に引き」とある)。筋肉=頭板状筋・頭半棘筋、運動神経=脊髄神経後枝、知覚神経=頚神経後枝、血管=後頭動脈。

 3.2 完骨

⑴部位は乳様突起後縁、突起先端より後上縁に昇ること約一横指の陥凹部。取り方は乳様突起先端、一横指上方の陥凹部で耳後髪際より約四部のところにある。筋肉=胸鎖乳突筋起止部・後頭筋、血管=後頭動静脈、神経=小後頭神経・後耳介神経。

⑵部位は乳様突起中央の後方で、髪際を四部入ったところの陥凹部に取る(乳様突起中央とは乳様突起が外方へ最も突出した部とする)。筋肉=胸鎖乳突筋・頭板状筋、運動          神経=副神経・頚神経叢筋枝・脊髄神経後枝、知覚神経=小後頭神経、血管=後頭動脈。

ところで、按摩の経験(特に座揉みの経験)がある先生方では窪みに指がはまりやすいのでいつの間にか完骨と風池を混同されてはいないでしょうか?筆者は免許は所持しているものの自称“ペーパーマッサージ師”の鍼灸専門ながら、昔の癖でやや混同していた傾向がありました。確認をしてみてください。

  3.3 外風池(部位のみの表現では上完骨)

部位は後頭骨の外端で側頭骨との接合部の間際。取り方は方法❶では僧帽筋の外縁を擦上して後頭骨に当たるところに仮点1を取り、分解後線に沿って外側に進んで指のはまりこむところに仮点2を定めてそのまま指を外側に強く進めて突き当たるところに取穴します(どうしても分解後線から指が放れがちになるので仮点を設定しました)。あるいは方法❷では完骨を取穴し、その上方の硬い筋を一筋越えたやや外方の窪みに取穴します。

正しく取穴ができたかの確認方法は、指頭で強く押圧すると頭中全体に強く響きがあります。追試開始の当初に、助手に取穴をさせると完骨と外風池の間の硬い繊維上にどうしても間違えてしまうので、原因を追及すると指頭圧が弱いので筋肉に弾かれていたのです。必ず頭中に響きますので慣れないうちは患者にも言葉で確認をしてください。

ここで話が反れるようですが、研修会で診察風景を眺めていると細かく観察をしようとするあまりに特に学生では一定範囲を何度も探っています。しかし、視覚障害者で点字使用の方なら解ることなのですが、点字を一文字だけを触っても読めないのです。何故なら一点や二点で構成される文字が幾種類もあり隣と比較して初めて位置と高さが判断できるからです。点字は指先で流しながら読むことによって言語として成立しているのです。人体の診察もこれと同じで、いくら一定範囲を丁寧に探っても懐疑心が深まるばかりで診察は成立しません。まずは大きく流して触って「ここはおかしいぞ?」という部分を抽出し、次第に絞り込めば不問診に近いことさえ少しの修練で可能になるのです。

また指頭圧も診断目的によって、本治法を行う際の五行穴・五要穴では皮膚面が沈むだけでも重すぎますし硬結を探るには複数の指で面状にそれなりの圧力が必要でしょうし、外風池や奇経・子午治療の圧痛点を探るには骨まで押し込むほどの圧力が必要で、要するに用件に応じて柔軟に目的意識と指頭圧が瞬時に調整できることは優れた治療家の条件の一つではないでしょうか?

 

4.西洋医学的考察

運動・知覚神経的には部位の項目で挙げたように後頭神経や脊髄神経などの支配領域ですから、頭部だけでなく背部にも鍼響があることは伺えます。また発想のきっかけが歯痛でしたから、歯科医が考える後頸部の処置で期待できる口内疾患を解説してもらいました。

胸鎖乳突筋について言えば、(歯科的に限局して言うと)胸鎖乳突筋は常に左右連動して頭部(視線)の安定を主体として働き、当然の事ながら視線を左右に向けるときには拮抗して動くのは良く知られています(第一頚椎と第二頚椎を中心に頭部を左右回転させる)。意識的に運動するときは、上記のような状態となり問題は発生しにくいと思われます。

しかし、問題は頭部を安定させておかないといけないとき、つまり食事(咀嚼運動)を行うときに歯牙に問題がある場合(例えば歯髄炎・歯根膜炎・咬頭干渉など)、通常の咀嚼運動をしているときに、食物が問題を起こしている歯に間違ってぶつかった場合に、回避するための反射神経の働きにより収縮状態にある筋が急激に引き延ばされるため、筋のダメージとして圧痛が起こる場合がある。この反射神経が働くとき、同時に頭位もこの状況を避けるように働くため、患側とは反対に片位してしまう。その為胸鎖乳突筋も筋の収縮バランスに以上をきたし、筋のはりと共に圧痛、さらには自発痛を伴う場合がある。この状態が長期間つづくと全身的な姿勢にも影響するとともに、ホルモン異状・神経障害等の全身疾患引き起こしかねない』。

つまり、外風池は筋緊張が起こりやすい部分の起止部であることから強固な硬結となっており、強固であるゆえに刺鍼しにくく痛みも起こしやすいので敬遠されて来たとも考えられます(推測しすぎですか)。

実際に臨床から報告されたことですが、腹臥位や座位で刺鍼すると元々強烈な鍼響により急激な血圧変動が発生して目まいを引き起こすことがあります。刺鍼は必ず仰臥位で治療者も良い姿勢を保って疼痛が発生しないように注意する必要があります。

 

5.東洋医学的考察

次は東洋医学ですが、脉診も含めた伝統鍼灸術からの病理考察は後述しますので、ここでは教科書的な考察を試みます。

 5.1 臨床追試の経過

臨床では例外なく外風池を用いているわけではありません。理由は三焦経に絡む病症が認められなければ著明な効果が認められないことと、ドーゼ(治療量)ガ非常に高くなってしまうからです。またあまりにひどいムチ打ちの後遺症などで経験されているような筋肉がぶよぶよになっている場合には、(表現は不適切かも知れませんが)経絡が挫滅して自己修復が完了していないようで刺鍼しても全く響きがありません。やはり我々は経絡に対して治療を行っているのだと実感します。

逆に積極的に施術を行うケースとは,過敏ではなくドーゼに対して自信が持て頚部や頭部の症状があったり(残っている)、頭部に限局せず全身症状でも寒熱の分布にばらつきがある場合です。施術が成功すると刺鍼部位ではなく、必ず遠隔部位にも鍼響が走ることが特徴です。鍼響についての意見は次に譲るとして、筆者はいわゆる「経絡治療」を実践している立場から鍼響については否定的でしたが、強刺激は恐怖ですが「走る」鍼響とはマイルドで非常に気持ちよく即効が実感できます。

 5.2 外風池は三焦経上にある

発想を確信した治験例では胸の熱が同時に落ち着いていたことが特徴であり、遠隔部位や経絡に沿って響かなければ鍼響も逆効果ではないかとの考察からすると外風池は三焦経にあると推測されます。

なぜ、三焦経なのか?理由の一つ目はほぼ間違いなく鍼響が遠隔部位に響くことですが胆経には沿わないこと、むしろ疾患部位に向かって直接走るのは臓象論から言うと「働きあって形なし」の三焦の役目に合致します。理由の二つ目は寒熱のバランスが良くなることで、ご存じのように三焦とは後天の原気のことであり即ち陽気のことですから陽気の循環そのものが良くなることで他の経絡に刺鍼するよりも著明に寒熱状態が改善しています。理由の三つ目は三焦経も耳介の周囲から後頭部に掛けて走行していることです。決定打は脉診による確認なのですが、これは次回に検証します。

三焦系に存在する意義というのがこの論文の意義ともなるのですが、臨床追試中には必ず脉が急激に柔らかくなり同時に鍼響が発生すると言うことに着目しました。どうして急激に脉が柔らかくなると同時に鍼響が走るのかを納得できるように説明できる古典資料は現在のところ発見できていませんが、病理的に考えれば熱は当然ながら上昇する性質があり、病気中には誰もが必ず「のぼせ」を体験しているはずです。病が回復すれば熱は鎮静するのですが暴れ回った熱は素直に飛ぶ鳥跡を残さずに去ってくれるのでしょうか?洪水の跡のようなもので傷跡を残していると推察するのが妥当でしょう。その熱の吹き溜まりというか熱の傷跡が外風池だと仮定すれば急激に脉が柔らかくなると同時に鍼響が遠隔部にも走り著効が得られると考えて不思議ではないでしょう。

         その証拠として刺鍼時には最初から抵抗感があり(これを第一抵抗とします)、ゆっくり刺入していくと粘りが段々強くなり(第二抵抗)、ついに硬結(第三抵抗)に突き当たり突き破らないように待っているとしばらく間をおいて脉が柔らかくなります。このタイムラグは熱の吹き溜まりが解消され経絡の巡りが悪かった部分に気が巡り始めるためのものだと説明できます。もちろん完骨に刺鍼したのではこの様な現象は発生しません。

 

6.治験例集(その1

 @頚椎ヘルニアからの上肢痛  患者は無職の六十五歳、男性。主訴は右肩上部から上肢に掛けての痛みと三・四・五指のしびれが一ヶ月前より続いている。症状が始まったのは三ヶ月前からで、激しくなってからMRIを受けると四・五番間の頚椎ヘルニアと診断されたが手術をする段階でもないと言われたものの、常にしびれと痛みが気になって夜も眠りにくい。仰臥位では頚椎の横突起が飛び出ているように顕著に触診される。病理としては疲労などで肝血が不足していたところへ外部から無理な力が加わったものが外邪となって侵入し少陽胆経にまで達して弱っていた肝を暖めて逆に肝実C血となって発症したと考えられるので脾虚肝実証で治療。頚椎ヘルニアとはびっくりするような病名ですが案外頻繁にあるもので、頚部または肩上部から上肢の特定神経経路に痛みがあり首を回してある角度で痛みが消失か増悪するのが特徴ですが、頚髄そのものに障害がなければ突き上がってくる熱の処置さえすれば矯正などしなくても治るドル箱的疾患だと筆者は臨床をしています。本治法を終えた段階で頚部の圧痛は軽減し腹臥位で標治法後は半減まで回復していました。脉状はトも・も取れましたが胃の気が足りません。ドーゼにも余裕があったので左右外風池に刺鍼すると胃の気が充実し頚部の違和感もほとんど無くなりました。経過は二回目でしびれがほとんど取れ、三回目で痛みが軽減し、四回目で痛みを感じない時があるようになった。現在継続中。

 A叉神経痛  患者は四十歳、女性。主訴は左三叉神経痛と耳鳴りと肩こり。発症したのは二ヶ月前で最初は単なる疲労からの肩こりと耳鳴りだと思っていたが、そのうちに三叉神経の第二・三枝が痛みだしたので耳鼻科を受診したが原因不明で痛み止めも効かず、ついには鼻茸だから手術が必要だとも言われ痛みの増悪に耐えかねて来院。触診すると後頸部の硬結はひどく脉状も弦を帯びている。病理としては肺気の巡りが悪く腎にも影響して鼻の症状から耳の症状を併発したところへ間違った投薬により婦人特有のC血が増悪して内熱が高まり顔面の激しい痛みとなって現れたと思われますので、難経七十五難型の肺虚肝実証で治療すると脉状の弦は取れ胃の気も出てきたのですが充分ではありません。以前なら顔面にも散鍼や刺絡などを試みていたのですが病理的に突き上がって来る熱を解消すればいいわけで背部の標治法後に外風池に刺鍼すると、顔面にも心地よい響きがあり脉状が一気に改善しました。経過は二回目では一度だけ市販の痛み止めを服薬したもののボーッとした感じが残るだけで痛みは止まり、三回目には耳鳴りも楽になり、四回目では完全に鼻が通って仕事にも復帰しています。現在継続中

 B視野の中心脱落  患者は五十五歳、男性。主訴は両眼がともに視野中心部に花びらのような靄もやが掛かって物が見えない。様々な眼科を受診したが原因不明で回復不可能と診断された。既往症に幼少時代に木から落ちて頭蓋骨陥没骨折に起因する左半身の不完全麻痺がある。脉状は浮数でトを帯びているが左手は麻痺側なので脉全体が弱く判断しにくい(麻痺側の脈動は弱くなっているのが普通)。病理としては目の前が暗くなって一瞬見えなくなるのは肝血の不足だが既往症からすれば男性でありながらも相当のC血体質であり、加齢とともに脾胃の働きが低下して血の生産が不足したところへ元々のC血体質が作用して、視野中心脱落が発生したと考え脾虚肝実証で治療。標治法でも頚肩部を中心に散鍼で緩めるが特に左の脉が診にくいままである。そこでC血による内熱が外風池を形成し血の流れをさらに悪くしていると考え刺鍼すると瞬間的に目の前が明るくなり、経過は二回目には全体が見やすくなり三回目には花びらが薄くなり四回目ではかなり消失をして以後順調に回復。現在治療中。

 C咽の痛み ⇨ 患者は三十歳、男性。電話では風邪で咽が痛いと聞いていたが、本人の訴えは同じ咽が痛いでも熱や咳などはなく喋るだけでも痛く食べ物は飲み込めないとのこと。実は三週間前に自宅で突然倒れ救急車で搬送され二週間入院をしていたが結局は原因不明で、症状が軽減したのとでとりあえず退院してきたがその頃から咽の痛みが始まり徐々に悪化をしてきたといいます。病院では数種類の点滴を繰り返されただけらしいが身体が重くなることはあっても軽くなったことはなかったと言います。脉状はが明瞭で左右で浮沈が違うので陰虚だと想像されます。病理的には突然倒れたことは気になるのですが現在は咽の痛みが主訴ですから急病を優先して考えることとし、科学薬剤は湿邪となり腎の蔵する津液を不足させ陰虚となり虚熱が上昇をしているはずです。虚熱でこれほど重症の咽の痛みを発生させるものか疑問でしたが、後頸部と下顎骨周囲のリンパ節は晴れ上がっていたので化学薬剤による誤治だと断定して腎虚陰虚証で治療。本治法後には唾が何とか飲み込めるようにはなりましたがかなり痛そうです。散鍼の標治法後に迷わず外風池に刺鍼すると、咽の奥に鈍く響いたとのことです。経過は二回目では治療後に飲み物が飲めた程度でしたが、三回目では何とかおかゆが食べられ、四回目ではうどんが半分食べられた(ここまでは毎日治療)、五回目では普通の食事をゆっくり半分程度食べられ、六回目以降は回復ペースが鈍ったものの十一回で完治。

 D瞼の腫れ  患者は二十五歳、女性(当院の助手)。昨年も瞼が「お岩さん」寸前まで腫れ、仕方なく皮膚科のステロイド軟膏で治めたが原因は不明。今回は就職して一週間の緊張と疲労から再発したと思われ、唇も乾燥し割れ始めていました。脉状は浮数で胃の気がなく跳ねが目立ちます。病理としては疲労で血を消耗したものの緊張による肺気の巡りの悪さは短時間でC血を形成し、急性熱症のC血となって難経七十五難型の肺虚肝実証で治療。本治法後には瞼の乾燥が和らぎ標治法後には目が開け続けていられるようになりました。しかし、アトピー性皮膚炎に代表される皮膚のかゆみやそれに伴う腫脹は熱が突き上がってくるものの熱量不足で皮下で留まるために発生すると考えられます(通常アトピー性皮膚炎は腎虚陰虚証で治療することが多い)。そこで熱のゴミ溜めはないかと外風池を探ると、著明な反応があるので外風池に早速刺鍼すると瞬間的に症状は見事に消失しました。疲労が蓄積すると時々症状が出ますが,外風池で自己治療するだけで充分とのことです。

 

今回は外風池をとりあえず臨床に用いれる紹介の仕方をしました。次回では病理考察を交えながら、さらに深く考察できればと考えています。

522-0201 滋賀県彦根市高宮町日の出1406




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