十周年記念大会および第十回夏季研を終えて

 

二木 清文

 

 まずは表記大会に参加された先生方、本当にお疲れさまでした。初日には台風が接近して来るというハプニングまでおまけとして付いてきましたけど、一歩会場内に入ればそんなことを全く忘れさせてしまう熱気で既に盛り上がっていました。

 初日は漢方鍼医会十周年記念式典であり、最初に福島会長より「我々は漢方鍼医であると自ら名乗り難経医学を中心として日本で根付いた伝統鍼灸を発展させ伝承していくことを目的としている」ことが、いつものように力強い口調で語られました。会場には初めて本会に参加した学生や一般参加者も多く、「漢方鍼医」という言葉で会場の「気」が一気に変化したことを感じたのは私だけではなかったと思います。

 次に本会顧問である池田政一先生の講演ですが、いつもとは違って一般参加者を考慮して違った切り口からの語りかけも新鮮でした。特に別団体の夏期講座でアンケートをしたところ「現代医学に基づく鍼灸を目指しているので混乱した」という回答があったそうですけど、それならば医学部に入学すべきであり鍼灸を用いて医術を志そうというのであれば鍼灸の理論に基づいたやり方、即ち伝統的鍼灸術でなければ何も意味がないと断言されたことに改めて納得していました。また臓腑と経絡の生理作用は概ね拮抗的であり、中医学があれだけ詳細な臓腑弁証をするのにいざ治療段階となれば単なる経穴への刺鍼となってしまうのはある意味では矛盾を起こさないためであるが、矛盾させないように選経・選穴を運用していくのが真の鍼灸術であるとも語られました。

 そして「グレートジャーニー 人類400万年の旅」を関野吉晴先生よりお聞きしました。時間を遥かにオーバーする熱弁からも伺えるように、会場内は人類というものは一体何なのだろうかと考えつつ冒険の話とスライドから想像を巡らせていました。生活全般を便利にすることは決して悪いことではないが、それによって誰か(これは人類だけでなく他の動物や地球そのもの)とのバランスを崩したのでは、決して環境には優しくないし適応しているとも言い難い。関野先生は初めての冒険から東京に戻った時に、そのギャップから半年間寮の中に閉じこもってしまわれたとのことです。我々の鍼灸術はバランスを整えることが目的であり、それは生命力を強化することそのものです。ということは、環境にも優しく地球という生命体にも適応した身体とするためには我々の行っている鍼灸術というものが最も適しているのではないかと、これも改めて自信と誇りを強くした次第です。もちろんこのような漢方鍼医会であるからこそ、関野先生をはじめ大塚・寺山先生からも暖かで勇気を強くするお言葉が懇親会で頂けたのだと思います。

 

 一夜明けて第十回夏季研が同じ日本青年館で開幕しました。今回は節目となる夏季研ですからリーダーを担当する先生は五月と九月に二回の合宿をして備え、実技内容はその成果を受けてのことですから順調に進行しました。今回で特筆すべきは日帰りコースが設けられたことにより、近郊を中心に学生の参加が大幅に増えたことでした。夜に懇談会が設定されていたのですが夕食がないために実技後に名札を返した人が多く「こりゃ淋しい懇談会になるなぁ」と担当者が落胆していたところ、終了が21時にもかかわらずほとんどの人が外食から戻ってきて参加し盛り上がったという事実からも、そして閉会式での感想からも国家試験中心の鍼灸学校教育に疑問を持って伝統鍼灸の入り口を求めている人が多いのだと痛感し、ますます漢方鍼医会の責任は増していくことでしょう。全国学術部長会議でも有意義な情報交換がなされ、この中でも学生を取り込んでいくことが若返りでもあり全体発展の起爆剤となるのではとの感触がありました。伝統鍼灸の入り口を求めながらもたどり着けない学生が多いことを認識し、一人でも多く金儲けではない鍼灸医学を目指す後輩たちを漢方鍼医会の会員として迎えることが必要でしょう。

 それと忘れてはならないのが夜の自主研修会です。場所によっては大騒ぎの方が大半を占めていたかも知れませんけど、普段では交流の難しい地方間で情報交換がなされたり何気ない「一言」がその後の臨床に大きく影響することはよくある話です。何を隠そう「一言」が、私の今の臨床スタイルを作り上げているのですから・・・。日帰りコースはこれから絶対に必要でありその意義も認めるところですが、合宿をする意義も大切にしなければなりません。

 

 個人的なことにはなりますが、この十周年記念では記念出版のテキストの一部執筆と「用語集」の製作担当をさせて頂きました。用語集作成委員会でのメール交換は自分たちの勉強であり、出版までにはメーリングリストを通じて公開ヒヤリングという新しい試みや学術委員会が合宿しての集中編集会議と多くの方々にご協力を頂きました。改めて感謝申し上げるとともに、用語集がマニュアルになるのではなく漢方鍼医会会員の日常言語となるよう、これからの十年間を頑張らねばと決意を新たにしています。

 最後にこの大会を支えて頂いた実行委員会には敬意を表し、参加者全員に改めて感謝を申し上げます。そして基礎を終えて大きく成長するこれから十年の漢方鍼医会を全員で作り上げていきましょう。




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