この文章は 「にき鍼灸院」院長ブログ からの転載です。

ていしんを試作中(その3)、第二弾で完成まで80%


試作品第二弾、  オリジナルのていしんを製作してもらっている仮定報告ですが、まずは何度も繰り返しているように道具はあくまでも道具であって、それで治療効果が極端に違うとか効果が発揮できないというものではありません。しかし、いい治療を・いい効果を導くためにはいい道具が必要であり、治療家は己の手と治療体系に合わせた独自の道具を考案して叱るべきではないかと先輩からも教えられたように私もそのように思います。
 ですから、ていしんのみで治療ができるといってもていしんが治療をしてくれるのではなく、あくまでも治療家の手の延長であること・治療は治療家が行うものという大前提をお忘れなく。
 それで今回は試作品第二弾での改良ポイントと臨床投入しての感想、そして滋賀漢方鍼医会の例会に持参して他の先生方にも使ってもらっての感想をレポートします。

 試作品第二弾は写真のように、第一弾と比べて先端部分をかなり細くしてもらっています。第一弾は龍頭が2mmで先端が1.6mmなのに対して、第二弾では龍頭は同じく2mmですが先端は1mmと比率的には森本ていしんよりもかなり細くなっています。写真中央には、比較のために森本ていしんもおいておきました。
 この森本ていしんよりも段差の比率を大きくすることは最初から構想に入ってはいたのですけど、率直には1mmを越えてしまうと押し手の拇指と示指で挟むには太すぎるという理由があります。
 そして、今回の試作品では鍼先を少し破片を除去するだけでわざと切り落としの状態にしてもらっています。森本ていしんではほとんど切り落としの状態であることから太さの違いを確認したかったことと、龍頭側ではその先端を真円になるようにしてもらっていますから、気の流れ特に邪気の流れがどのようになるのかを試したくて、刺激量というのか当たりというのかがきつくなることは予想の範囲だったのですけど試作品ですからそのようにしてもらっています。

 さて臨床投入をしての結果ですが、第一弾の時には「治療が終了してもまだ身体の中をかきむしられているような感覚が残った」との報告をした助手も第二弾では残像のようなものはなかったとのことであり、もう一人の助手もいきなり眠くなってきたとのことで第一弾では指から鍼先が余っていたものが修正されて気の入り方が描いていたものに近くなっているという印象でした。
 自己治療をしてみても流注上を気が走ってくるのが明確に分かるという印象で、毫鍼でピタリとツボに当たった時にはいわゆる「刺激」そっくりの響きが走ることが多かったのですけど、その感覚に近いものがありました。もちろんその当時よりも経験年数がありますからツボへ当てるテクニックも多少向上しているでしょうが、そこはていしんの有利なところでツボへパーフェクトに命中させやすいですから、狙っていた森本ていしんと毫鍼の中間のような鍼へ手応えがあったという感じでした。

 次に研修会で他の先生方に使用してもらっての感想なのですが、まずは龍頭を平面に加工したことについては良好な評価でした。どうしても鍼を「つまむ」癖が学生時代に付いてしまい無意識のうちにそのように手と鍼の関係がなってしまう先生がおられて、狙っていた刺し手の矯正も機能しているようです。
 ただし、始めて手にしてそのまま治療となったものですから手に馴染んでおらず、片平面タイプと両平面タイプで間食が違うことに戸惑いと好き嫌いが分かれました。
 片平面タイプと両平面タイプでは握り方を少し変える工夫が必要なのですけど、これは私も一週間ほど臨床を経過して気付いたことですから、最初から手に馴染むのではなく手が慣れて道具の側も治療家の手を知っていいタッグが組めるものですから、評価の違いについては予想の範囲でした。

 ところが予想外だったのが「強いだけでなく重たい気が入ってくる」という報告を何人もの先生がしてくれたことでした。
 本治法の段階では森本ていしんを使った時と脉の出来具合に確かに差はありますけど、その差は個性であり治療効果のさにはつながらないとすぐ判明します。けれど標治法を受けている側から「それは重たい気が入ってくる」という感想があり、森本ていしんでは聞いたことがないので第二弾のていしんを自ら腹部で受けてみると、ダメージを与えるほどではないのですけど確かに重たい気が深くまで突っ込まれてくる時がありました。
 これは想像なのですけど、片平面タイプを好まれる先生が多かったということで龍頭が太くなった分だけ握る力も強くなっていたのではないでしょうか。これに加えて鍼先が切り落としの状態であったため、深く差し込まれてくるような感覚となったのでしょう。

 それで既に発注している第三弾の試作品では、まず鍼先を切り落としではなく丸くしてもらいます。臨床現場でもフルスピードで治療をしていたなら患者さんの皮膚を引っかけてしまいそうになることはよくある話で、その時に切り落としの状態であればひょっとしてですが傷を付けてしまいかねません。それと刺激が鋭くなりすぎないという配慮も含んでです。
 それから先端部分が1mmより小さくすると強度の面や龍頭とのバランスからは無理があるのではないかと思いつつ、0,8mmのものも試作品であるゆえに発注しています。両平面タイプの場合には、製作コストがかなり高くなりますけど0.8mmまで細くした方が全体バランスが良好になるかも知れないという実験です。

 とにかく第二弾で80%の完成率を目指していたのですが、製作会社とのコミュニケーションも取れて目標は達成できたと思っています。最終品は四月に完成すればいいなぁと思いつつ、次回では鍼の握り方について言及したいと思います。


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