間違いだらけの知識集

“素人療法”は危険です(その1)

 

 「みんなから『それは座骨神経痛だ』といわれた」とか、「手首が腱鞘炎になってしまって」など素人同士で病名を付け合って、それで怖くなったり悪化をさせて来院され相談を受けることがよくあります。まず病名については西洋医学のお医者さんが診断するものなので、その他大勢が勝手に命名することはできません。そしてもっと危険なことは、勝手な判断での素人療法です。このパンフレットでは、よく見かける間違った素人療法を特集しています。

 

正座の練習は危険

 正座ができないと、色々な面で不都合が日本社会ではやはりあります。行儀のことがありますし「正座の方が座るのが楽」という人もいますけど、残念ながら高齢になったり膝の変形をしてしまった場合には正座をしないことが、それ以上膝の痛みを悪化させない一番の予防法です。

 膝(ひざ)関節は本来は直角までしか曲がらないところを、そこからは螺旋構造で横滑りをして完全に折り曲がるまで動くようになっています。人間が二足歩行をするようになって、速く走ったり崖を登ったり降りたりするなど他の動物にはできない行動をするため、必要に迫られて獲得した特殊構造の関節なのです。

 大切なところは、本来直角までしか曲がらないのが基本だということです。膝には重力が一点に掛かってくるので、上半身のバランスが特に腰が悪いとその負担から膝の関節変形が発生してしまいます。そのような膝を無理に曲げようとしても、変形部分が螺旋構造へブレーキを掛けてしまうのでさらに変形をさせてしまいます。痛みが停止できたならウォーキングやスイミングで筋力をもう一度鍛えるのはいいのですが、スクワットはダメということです。

 そして目を覆いたくなる間違った素人療法は、お風呂の中で正座の練習をする人がいることです。お湯で身体が温まると関節は柔らかくなりますからその時だけ正座が復活するのですけど、本来直角までしか曲がらない関節を強引にねじ伏せてさらに曲げていることになり、湯冷めしたなら痛みがひどくなってしまいます。

 お寺の集まりでも椅子が用意されるようになりましたから、膝が痛むのであれば素直に椅子に座ってください。また正座そのものはできるが痛みがある場合は、挨拶など必要最小限だけにしてください。

 

 

 

腰痛での間違い

 ただ、腰のためには正座の方が座り方としては安定しています。けれど前述のように日本式の正座は膝への負担はあっても決して優しくはないので、足は伸ばしておいた方がいいことになるのですが今度は腰がしんどい。では、どうすればいいかというと直接に座るのであれば膝を抱える学校体育の三角座りですね。または椅子に座るということで、膝や腰に痛みのある場合は和式トイレも避けられるのであれば避けておいた方が無難ということになります。

 ところで、これも前述のようにお風呂へ入ると関節が柔らかくなるのですけど、必ずしもプラスの結果が出るとは限りません。腰痛で一番間違われているのは、「温めると痛みが楽になるから」と入浴を繰り返して逆に悪化をさせているケースです。痛みが発生しているということは炎症があるということであり、炎症というのは単純にいえばその場所が腫れていることです。腫れているということは熱がこもっているのですから、腰痛の時に入浴をしたなら自ら余計に腫れを強くしてしまう以外の何者でもありません。

 では、どうして入浴中は治ったかと思えるほど腰痛を感じなくなってしまうのか?答えは簡単で、腰にこもっている熱の温度以上にお湯の方が熱いためです。腰が腫れている状態が擬似的に解消してしまう、つまり腫れていることがより熱いお湯のために分からなくなるためです。

 そして湯冷めをしてくると元々腫れていたものを温めたのですから、余計に腫れが強くなって就寝しようという頃にはズキズキと痛みがさらに強くなってしまいます。急に痛みが発生してきた時には腰だけでなく、首や背中や膝などどこでもお風呂へ入ることは間違いなのです。

 

お風呂はオアシスなのですけど

 では、お風呂へ入ってしまったならどうすればいいのか?これも答えは簡単で、もう自力回復はあり得ませんから治療を受けていただくことです。そしてこもってしまった熱は冷めてもらうしかないので、指示された日数の入浴は控えていただくことになります。

 でも、単純に入浴を控えるだけで腰痛が回復するのではありませんから、その点も間違えないでください。治療をすることで、急速にこもってしまった熱の解消がなされるのです。また急性は入浴禁止でも慢性になると入浴は不可欠であり、湯治というくらいですから大病の後などにはリラックスを含めて、お風呂には治療の効果が大いにあります。

 問題はどのような場面が入浴禁止かを考えることなのです。分からなければ素人療法に走らず、専門家に問い合わせるのが一番です。

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