ものが二重に見えます、それは

複視」といいます。

 

 時々「ものが二重に見えて困る」とか、「真っ直ぐは大丈夫だが左(あるいは右)を見ると二重になってしまう」という相談を受けます。これは「複視」という症状です。

 

多くは神経の異常によって「複視」は発生します

 中学の理科で学習したとおり、分け方によって幾種類かにはなるものの人間の神経をまず中枢神経と末梢神経に分類します。中枢神経というのは脳と脊髄のことで、文字通り中枢的な働きをしていて、つまり情報を収集して考えたり感じたりしながら今度は命令を出すコントロールセンターの役目をしています。末梢神経は中枢神経から出てくる枝のことで、運動神経と知覚神経に加えて自律神経ということになります。

 末梢神経の中でも、脳から直接出てくる神経が十二本あります。脳神経といって、概要は次の通りです。

 

 第T脳神経:嗅神経(嗅覚=臭いを感じる=知覚神経)

 第U脳神経:視神経(視覚=眼球の網膜に写った映像を伝える=知覚神経)

 第V脳神経:動眼神経(視覚=水晶体や瞳孔の調節と眼球の動きの多くを担当=運動と自律の混合)

 第W脳神経:滑車神経(視覚=眼球を外下方向へ動かす=運動神経)

 第X脳神経:三叉神経(触覚=大きな三つの枝に分かれ噛む動きと顔面の触覚の大部分を担当=知覚と運動の混合)

 第Y脳神経:外転神経(視覚=眼球を外方向へ向ける=運動神経)

 第Z脳神経:顔面神経(表情=顔面の表情を作ることと舌の前三分の二の味覚=運動と知覚と自律の混合)

 第[脳神経:内耳神経(聴覚=音を聞くことと平行感覚を担当=知覚神経)

 第\脳神経:舌咽神経(味覚=舌の後ろ側三分の一の感覚と飲み込む動作を担当=知覚と運動と自律の混合)

 第]脳神経:迷走神経(喉から内臓へ=喉の知覚と発声と内臓の広い範囲へ自律神経を走らせる=運動と知覚と自律の混合)

 第]T脳神経:副神経(筋肉の運動=首や肩へ命令を送り動かす=運動神経)

 第]U脳神経:舌下神経(舌=舌へ命令を出して動かす=運動神経)

 

 ということで、視覚に関する神経が四つもあるということで、脳神経の三分の一ですから目が見えるということはどれだけ複雑なことかがまず分かります。

 

脳神経に関することで色々

 まず味覚は二つの神経が支配しているということは、それだけ味が分かることにより「これは食べてもいいものか悪いものか」を判断して命を守ってきたという証拠になります。また舌を動かすのに一つ専用の神経があるということで、複雑な動きが可能になっています。風邪になると嗅覚や味覚がいきなり飛んでしまう人がいますけど、回復も割と簡単です

 耳が聞こえることと平行感覚が密接な関係なのは、一つの神経が同時に支配しているからです。ただし、目眩がするメニエル病というのはおそらく内耳神経の異常だろうというだけで、未だに原因不明です。

 それから表情を作る筋肉は顔面神経が支配しているので、麻痺が起こった時には顔面神経麻痺ということになります。鍼灸が非常に得意としている病気です。しかし、この顔面麻痺には種類があって、発生する二週間くらい前に耳が痛かったものはウィルス感染によるハント症候群というもので、鍼灸でも発病から一ヶ月以内に治療を開始しないと完全に治せるか分からなくなってしまいます。また過去に顔面麻痺があって、回復後も痙攣が発生するものはハント症候群の後遺症だと思われ、完全には治せる確立が残念ながら低いです。

 そして「顔面神経痛」と勝手に名前を付けて来院される人が多いのですけど、顔面神経は運動神経であり知覚は三叉神経が支配しているので、顔が痛いというのは「三叉神経痛」です。

 

複視の正体

 では「ものが二重に見える」ことの正体ですけど、単眼複視といって片目の時に現れるものは白内障など眼病がありますから、これは眼科を受診してください。両眼複視は糖尿病や脳障害のことがあり、これらは他の症状と合わせると原因がハッキリしているので、まずは原因治療からです。複視の多くは動眼神経・滑車神経・外転神経の麻痺であり、鍼灸が得意としている疾患の一つです。

 眼球の周囲へ鍼を刺すようなことはしません。「邪専用ていしん」というオリジナルの道具で周囲をタッピングする以外は、全身調整が主で、首が凝りますからこちらへも「邪専用ていしん」を行います。半分くらいで取ってしまう大きなお灸を眼球の上へすることがあり、これは眼球が温かくなるのでとても気持ちいいです。

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