治療ポイントあれこれ、頭を使わないというのはもったいない

ゾーン処置で標治法は変わる!!!


二木式邪専用ていしんと二木式標治法用ていしんを比較した写真  経絡治療へ入門した当時から、不思議に思っていたことがありました。それは「どうして頭部への標治法というものがないのだろう」ということです。顔面部には散鍼をしたり目の周囲に置鍼したり、まぶたの上から知熱灸をするなどはあるのですけど、ずっと広く経穴も多く存在しているのに頭部には百会のお灸くらいしか目立った処置を聞きませんでした。頭皮針という中国針のやり方は有名で、中枢麻痺の回復さえ症例によっては可能だと聞くのに、どうして日本の鍼は頭部を標治法のターゲットにしないのだろう?
 日本で圧倒的に用いられている鍼管を使っての刺鍼技術だと衝撃があったり深さも限られているのであまり適応しないでしょうし、捻鍼でも毛髪の長い女性だと手こずるだけですから取り入れられなかったのだろうと、臨床家になってからは想像できるようになりました。けれど小児鍼の時には軽く頭を叩くことでいい刺激になっていますし、百会にお灸ではなく鍼でも痔の治療もできましたし、頑固な目眩を集毛鍼を頭部に行うことで回復できたことなどがありますから、顔面部を含めて頭は陽経が巡っている「陽の固まり」なので瀉的なアプローチをすればいつかはきっと使いこなせるのではと思い続けていました。

二木式邪専用ていしんの誕生まで

 ところで、右上の写真は55mmの二木式標治法用ていしんと二木式邪専用ていしんを並べたものであり、左下のものは方向の違いからの写真です。この二つのていしんの違いは竜頭の形状であり、先端ではなく竜頭の方で鍼の種類を区別しているというのが二木式の特徴の一つです。正直なところは、いつの間にかそうなっていただけなんですけどね。
二木式邪専用ていしんと二木式標治法用ていしんを反対方向から比較した写真 最初の「二木式ていしん」の発送から開発までは ていしん試作レポートの閲覧ページ でまとめているのですが、要約すると1.段差をつけたのは気の流れをコントロールするためで森本式ていしんから許可を得てアイデアを頂いた、2.細い先端は真円にして当たりを柔らかにするだけでなく邪を受けにくいようにしてある、3.示指を真っすぐ伸ばして竜頭に沿わせられるように平面をつけた、4.竜頭が太くなったので小児鍼にも用いれるので先端を真円にしている、5.竜頭皮の先端が深遠なので逆に押し込んで深い部分の邪を排除できるようにもなっている、という感じです。
 ところが、他の先生に使ってもらうと「このていしんは握りやすい」という感想が次々に戻ってきてしまいました。いやはや、困ってしまいました。鍼は指の延長であり挟むだけであり、平面は示指を伸ばしやすくするもので握るためにつけたのではなかったのです。そこで全長を55mmから45mmに短くして力の入りにくいようにした二木式本治法用ていしんの改良版を一つ追加することになります。
 その前に竜頭を丸くしてみたりバット型にしてみたりという試行錯誤もしていました。丸くしたのでは森本式ていしんの肥満体であって意味がなく、バット型はていしんそのものが重くて補う手法ができないでは話になりません。ただ、バット型は竜頭を深く押し込んでの邪を排除する操作で痛みを伴わないことがわかったので、ついでならより邪気を抜きやすいようにと竜頭の先端を真円から穴でえぐってやろうというのは実は半分冗談だったのです。ですから、見本は出来上がったものの最初はすごい勢いで気そのものが抜けてしまいますから使い道に苦慮し、二木式邪専用ていしんは数年放置していたのです(開発にはそういうことがつきものなんです)。

タッピングで邪だけを排除できる

 しかし、我ながら「これほど見事に気の流れのコントロールできる形状を発案できた」のですから、単に煙突のようにして皮膚上に建てるのではなくひと工夫すれば何かができるのではとまた漠然と考えていました。
二木式邪専用ていしんの標準的な持ち方、示指を少し先端から出しておく  まずわかったことは、バット型のときと同じく竜頭を深く押し込むことで臀部など深い部位の邪を排除するのに痛みが少ないことと、効率が相当に高いこと。けれどバット型のほうが痛みはなかったので、右の写真のように示指を少し先端よりも出しておくことで痛みが回避できることもわかってきました。この持ち方を浅い部位で応用していくと、自然と使い方がタッピングになり、邪だけを排除できること、これも我ながら大発見です。
 邪というものは身体内部で暴れまわるものだけでなく、実は外へ出たがっているもののほうが多く、そういう邪は動きも素早いのでちょっとした出口を提供してやることが治療全体をスムーズにしてくれます。タッピングの動作を二木式邪専用ていしんへ取り入れたなら、皮膚表面の悪血を散らせるようになり、転換手法で調整しなければならない高潔も研修会で行った規則的な動作で会員が習得していってくれました。
 そして「タッピングの動作なら毛髪の多い頭部でも応用できるはず」と思いついた頃、WFAS2016でのヒントから今回のゾーン処置へとつながってきています。文章や写真では具体的なところが伝わらないので 邪専用ていしんの使い方とゾーン処置youtube から動画をご覧ください。頭への処置はとても気持ちが良く、「何かが抜けていく感じがする」と感想をもらうことも多くあります。標治法の大部分をゾーン処置でまかなえてしまえることから、治療全体としては本治法へより集中できるようになり、スタッフのいる治療室だと分業で圧倒的に治療時間の短縮が可能になります。頭を標治法に組み込まないというのは、実にもったいないことですよ。


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