東洋医学の印象は、「神秘的」とか「副作用がない」といった魅力的な反面「非科学的」という厳しい評価もあります。有名になったご覧の「太極マーク」ですが、これは「陰陽」つまり陰と日なたを表しています。しかし、西洋医学の発想と大きく違うところは
「陰の中にも陰陽があり・陽の中にも陰陽があり」
と、向こうとこっちをハッキリ区別するのではなくお互いに助け合うことで成り立つものだという思想が根底にあることです。
患者さんによっては大げさな表現もありますけど、病状が「あるものはある」のですし、
「気のせい」なのではなく「それこそが気の働き」
だとして治療が始まります。
これは極端な表現ではありますが、的確な表現でもあります。西洋医学は
「目で見えるもの」
が基準ですから見えないものは切り捨てますし、見えるものは診察者の気に入る範囲に収めようとする傾向がどうしても強くなります。言い換えれば、間尺に合わせる治療が多く行われていることになります。
適応範囲から飛び出しすぎているものを納め直してくれる”手術”
は飛び道具なのでそれは必要なのですが、
少しピントがずれただけのものを無理矢理コントロールされるのは、大きなお世話
のことが多いでしょう。
東洋医学は無理矢理コントロールするのではなく、
人体が本来持っている自然治癒力
を発揮させるように働きかける治療法なのです。決して万能ではありませんが、守備範囲は想像されている以上に広い医療なのです。
左はテレビなどに出てくる、いわゆる「はり」の写真でその上の太いものは鍼管といいまして、これに最初鍼を通してトントンと叩き込めば痛くなく鍼を身体へ刺すことが容易となります。私も(視覚障害者ですから)滋賀の盲学校に在学していた時にはほぼこの道具類でしたし、助手時代も開業してしばらくもこの道具類が主体でした。ですから、 世間一般で広く行われている鍼灸そのものを否定する気持ちは一切ありません。 しかし、 経絡の調整を主目的としないものを鍼灸術とは認めがたいです。
中央はトップページにも掲載してある「てい鍼」の写真で、右は
「てい鍼」が本当に刺さらないことを証明するため手のひらへ思いっ切り押しつけた写真です
(カラーでは返ってわかりにくくなるので色を抜いてグレースケールにしてあります)。
単に「痛くないようにするため」に道具を変えたのではなく、より古典医書を忠実に再現するにはどのようにすればいいかを追求する中で自然に変遷してきたものです。それに
「痛くなくて」「刺さらなくて」治療効果が上がるのであれば、それでいいんじゃないでしょうか?