東洋医学・治療の説明(その2)

経絡図の写真、その2

経絡(けいらく) その2

 少し見にくいですが、右の写真は前ページの「経絡図」のもう一方になります。興味のある方はもっと詳しい図解をご覧になったことがあるでしょうけど、一つ大きな誤解を受けているのが 「経絡は線のようになってつながっている」 ということです。それから鍼灸で理論的に探っていくと経絡が発見されたのではなく、経絡をより効率的に運用するために考えられた道具が鍼やお灸だったというところです。

 経絡図は理解を助けるために関連する経穴(けいけつ)、つまりツボを結んで描かれていますが 経絡とはそれぞれに「幅」と「深さ」を有していて、体中で巡っていない箇所はない のです。
 ここで 当院で初診時に治療説明しているフレーズ を掲載しておきます(関西弁丸出しですから、こんなに格好いい言葉じゃないですけどね)。

 「漢方では人間の身体には12本のエネルギーの流れがあるとしています。この流れが順調であれば 自然治癒力 、つまり自分で病気を治す力が旺盛なので病気にはなりませんが、流れに乱れがあると例えば肩こりや腰痛になったり風邪をひいたりなどします。ですから12本の流れを調整してやれば 自然治癒力 が復活して再び旺盛となり、病気は回復出来るのだと考えます。そのためには 手足の末端あたりにあるツボを使ってやる方がバランスの調整がしやすいので、最初は手足から施術をするのです。」

また太極マーク

自然治癒力とは

 ところで、どんな医学を用いたとしても「治る力」とは 自然治癒力 以外にはあり得ないのです。
 例えば指先に包丁などでケガをしたとします。普通なら救急テープを貼りますよね。ではこの救急テープが傷口を治してくれるのかといえば、雑菌が入るのを防いだり傷口を引き寄せて回復しやすくはしてくれるものの、救急テープが治してくれるわけではありません。

 もっと極端な例え話をするなら 盲腸(虫垂炎)で手術が必要になったとします。患部を切り取ってもらい危機一髪が救われたのですから「ありがとうございました」とお礼を述べるまではいいのですが、傷口がふさがらなければどうなるのでしょう?抜糸の時期が来たからと傷口も見ないで糸を抜き、それで切開部分がふさがっていなくて口を開いたとしたなら、これは病気を治したことになるのでしょうか?

 つまり「治る」ことは、あくまでも本人の持つ 自然治癒力 以外にはないのです。様々な医学は、その 自然治癒力 をどのように発揮させるかの違いによるのです。

八卦模様

漢方医学?東洋医学?

 「漢方医学」と「東洋医学」は、基本的に同じです。所属する研修会 漢方鍼医会滋賀漢方鍼医会 の名前を聞かれると、「先生のところは漢方薬も出してもらえるのですか?」とガッカリする質問を受けることがあります。

 「漢方」という言葉は、「漢時代(前漢・後漢)に成立した医学」や「漢民族から伝えられた医学」という意味です。解説の都合上から鍼灸と漢方薬は別々の書物に記載されることが多かったものの 同じ医学体系に属する ものです。だから「東洋医学」も同じことになります(もっと広い地域をカバーしていると主張する学派もありますけど、素人さんからは一緒ですね、やっぱり)。八卦(はっけ)模様を掲げておきましたが、陰陽や五行といった思想に根ざした医学と言い換えても構わないでしょう。

 ところで、 大きな声では言えないのですが 実は現在の日本で行われている鍼灸には大別して二種類あります。ここまで読んで頂いた方にはもうおわかりでしょうが、テレビに出てくるタイプのものと 当院が採用している脉診(みゃくしん)を駆使したタイプ です。
 テレビに出てくるタイプのものは、見ての通り身体へそこそこの太さのものをそこそこの深さまで突き刺しますから、「治療中の刺鍼による痛みはない」と宣言されていても事実上は痛い鍼も時々(?)あるものですし、局所のみへ直接施術されることは考え方の根本が西洋医学です。「ツボ」は活用されているでしょうけど、「経絡」はほとんど意識されていません。「鍼灸」という道具を用いて、西洋医学の施術がなされているわけです。


 それでは、 漢方医学本来の姿 である「脉診」と、自然治癒力の強化について解説します。

東洋医学の説明 その3へ   東洋医学の説明 その1へ戻る   『にき鍼灸院』のトップページへ戻る