この文章は2008年9月20日の院長ブログを転載したものです。


夏期研実技編(その1) 研修マニュアルの誕生まで


 既に最近の記事はほとんどが全日程を無事に終えられた「第15回漢方鍼医会夏期学術研修会滋賀大会」の情報を使い回しているのですけど、今回からは内部情報ではありませんけど少々突っ込んだ学術面に関して記録を残していきます。

 滋賀大会に向けては、マンパワー不足の滋賀漢方鍼医会がゆえに会員への負担を極力小さくするためにソフトウェアに関しての取り組みから始まっています。
 通常は次回開催の担当者が副実行委員長として参画するため、第14回の実行委員会立ち上げから積極的なアプローチを開始しました。そして、小林実行委員長の英断により「二年計画でソフトウェアを考えればいい」と学術面を全面的に任せてもらえることとなり、まず取り組んだのが「指導マニュアル」でした。
 「指導マニュアル」は第13回の反省会で存在を強く要望されたものであり、講師合宿を毎年二回ずつ開催していると行っても統一行動のための詳しい資料がない年もあったので「実技テキスト」の手前のようなものを一度製作していこうということでした。

 「実技テキスト」手前のものとなると、豊かな個性は生かしつつもばらつきの少ない証決定と手法が行われなければならないということであり、これを言い換えれば「基準線の統一」です。
 基準線を統一するためにはいくつかの要素があると考えたのですけど、
  1.気血津液論を基礎とした病理考察を推進するのであれば、病理産物の触診を取り入れなければならないので、手を回しながらの覆審を導入する
  2.手法を統一するためには、基本刺鍼以外にも実践的な刺鍼修練が必要であり、腹部を用いての衛気・営気の手法修練を取り入れる。
  3.最も難しいのは脉診の統一とその運用だが、菽法脉診を行っているといいながらも指の重さが気になる人は多く動かし方もバラバラなので、まずは指の重さを基準統一する。
  4.証決定を行ったとしても、いきなり経穴を触診したのではベテランの気を動かす力であればよほどでない限りそれなりに身体は改善してしまうものであり、選経から選穴へというステップを必ず踏むようにする。

 そして詳細なマニュアルを正月休み返上で、しかも昼夜逆転しながらの作業をほとんど一人で執筆したのですが、結果としてはまず「指導マニュアル」という名前がいけなかった。漢方鍼医会は講習会ではなく研修会であり夏期学術研修会なのですから「指導マニュアル」という形式が反発を招いてしまいました。
 それと最終的には15000文字にも及ぶ論文級の文書量というのも全体の見通しが悪くなり、伝えたいことが十分には理解してもらえなかったようです。

 しかし、負け惜しみではないのですが元々が二年計画の一年目であり、誰も言葉にしなかったものを一気に吐き出すことによってその続きが産まれたものと自負しています。
 もちろん素直に指摘された点は反省し、アドバイス頂いたものが合っての二年目であることは間違いありません。それこそ研修会なのですから、講師陣だけでなく全員で見いだしてきた成果でもあります。

 二年目も当初は「指導マニュアル」でしたが実技に対するお願いだけの記述とし、途中からは「研修マニュアル」と改名して四時限それぞれの流れとその際の注意点だけの記述ですから1000文字に満たない資料だけで夏期研の実技は進行しました。これは講師合宿を一回目と二回目で大きく内容を変えたことが要因です。
 一回目は「軽擦のやり方」について確認するところから始め、軽擦だけで一時間を費やすことにより明くる日からの実技にも反映されてきたからであります。腹部を用いての衛気・営気の修練についても一時間半を費やし、ここで「衛気・営気の手法とは一体なんぞや」というところまで議論が戻ったことにより手法統一の重要性がさらに認識されたと思います。
 これを踏まえての二回目は、時限ごとのリハーサルを行っていますから1000文字に満たない資料で実技が進行できたというわけです。

 では、次回より「基準線の統一」で掲げた四項目について、順番通りにはならないでしょうが具体的な内容と経過・今後について書いていきます。


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