そしてもう一つ最後の最後で遭遇した、病理考察という手段がなければ経絡治療であっても脈診がそのほとんどなら解決に導けなかっただろうものです。もちろん脈診は絶対に必要で、突破口は脈診からもらってはいます。
まず助産師をされている方ですから医学的な情報は正確で、約一ヶ月前から鼻炎がひどくなってから体調全般が悪くなり始め、数日前から顔の右半分に痛みを感じてきています。服薬はしてみたが、効果がなく他の不定愁訴も強くなってくるので「30日で診療してくれているか」と思いつつ、電話を入れたとのことでした。
本当に顔の右側が膨れてきていましたが、皮膚表面の艶まで薄れていたことからこれは歯が原因でないとわかります。妊娠適齢期の女性に胸で熱がこもってしまう状態が頻発していることと、側頸部の高潔はそこまで強くなかったこと、脈診で両方の寸口が同時に盛り上がっていることからやはり胸で熱がこもっているのだと考察できます。
服の上から膻中を押さえて痛みがあるかを確認すると、実は胸にも痛みを感じることが何度もあったものの弱くて瞬間的なので、特には申告しなかったといいます。確認のため二木式奇経鍼で膻中から熱を抜いてみると、これだけで顔面の痛みが軽くなってきました。
病理としては鼻炎から局所の熱が発生し、この程度の熱なら循環すれば問題にならないものの胸で元々熱がこもっており、胸から下がれないので顔と胸の狭い範囲で熱が行き来するため、急激に顔が膨れて痛みにもなり右半身全体のアンバランスにもなっていたのでした。
治療は肺虚肝実証で悪血への治療もして、拡張ゾーン処置で頭から邪が抜けるようにもして、この時点で全身はとても気持ちよくなりました。もう一度膻中から二木式奇経鍼で直接熱を抜くと、見え方が暗くなっていたものが一気に明るくなったということでした。
少しおまけの話を書くと、出産数の減少が著しいのですが最近は外人が来院されることが多く、ベトナム人が多いとか。スマートフォンの翻訳アプリの活用でなんとか対応しているとのことです。出産現場ではアプリを通じての会話は困難なので、早くリアルタイム音声翻訳が実現してほしいものです。