てこに合わない症例

 うーん、あまりいい話ではないのですけど、備忘録的に書き残しておきます。
 初診の患者さんは首のつまりと腰痛を訴えられていた三十歳前後の女性なのですけど、すごい数脈です。しかも、細くてもう少し堅ければ針金という表現になるところです。
 パターン的にはバセドー病といいたいところなのですが、特徴的な脉が沈みきる前に次が突き上げてくる脉状になっていません。どうもおかしいと思って予審の結果を聞いていると、一年前に出産はしたのですけど赤ちゃんが二ヶ月で亡くなっていたということで、心の傷が多かれ少なかれ体調へ異変を出しているのでありました。
 このなるべく他人には話したくないだろうことを通常の予審報告として普通にしゃべってくる助手、いろいろと事情はあるのですが臨機応変という点で接客業に向いていません。もちろん仕事が終わってから、てこに合わない症例はこちらへすぐ回すようにと言いつけました。

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