頭の中がすぐそれだけで一杯になってしまう患者さん

「本治法の力を信じなければこの鍼灸術はない」と散々に指導の現場では繰り返してきた言葉なのですけど、今頃になって身にしみる体験をするとはです。
以前から何か症状が発生すると頭の中はそれだけでいっぱいになってしまうタイプの人であり、生肉を食べてしまい腹痛がずっと停止しなかったときなどは「これ食中毒ですよね・これで死ぬことはないですよね・赤ちゃんは産めますよね」と、直接関係ないことまで矢継ぎ早の質問攻めでありあとから電話もかかってくるという、少し踏み外すといわゆるモンスターの部類の患者さんです。
めでたく短期間の不妊治療から出産されたのですけど、高齢出産のためか「全身倦怠が取れず不安感が強く睡眠が取れない」と電話の段階で矢継ぎ早の訴えです。実際に治療をすると産後のうつではなく脈診からも3大調光からもバセドウ病ですから「ホルモンの病気は気合でなんとかなるものではないものの鍼灸治療と相性がいいので治りますよ」との話に、とても嬉しそうでした。
ところがまだ一度歯科治療をしておらず、パンフレットにも「一度目で著効の人と二度目で効果が現れる人の違いはまだわからない」と書いてあるのに、「倦怠感は取れたが不安で不安で特に睡眠が取れない」と5日語に矢継ぎ早の電話です。一週間後の予約はそのままに追加の治療をしたのですけど、ベッド上でも「眠れないのはどうして」のオンパレード。
けれど数時間後の電話で、「授乳中でも飲める睡眠薬があったので使っていいか」ということでしたが、「帰宅したなら不安感は取れてしまった」といいます。矢継ぎ早の質問攻めに本地方の力をこちらも見失いそうになっていたのですけど、ややこしい症状こそ本治法しかありません。「こんなに治療で回復するもの」って、鍼灸治療をわざわざそのために選択したのではなかったでしょうか?もちろん西洋医学だけに任せているとうつ病として強い薬を出されてしまった可能性が高かったでしょう。そして症状が改善しているのですから素直に喜べばいいのに、頭の中は今度は「こんなに回復をして」ということでいっぱいのようです。まぁ今までからも劇的な回復を繰り返している患者さんですから予測はしていたのですけど、高齢出産は治療側としてはできれば避けてくれたほうがというところへ落ち着くのでもありました。