患者さんの訴えは、どこまで聞く?

 患者さんへ問診をする時、特に初診では話をしっかり聞いてあげねばなりません。病院ではまともに問診されず、人間不信になっている患者さんも多いものです。
 ところが患者さんの訴えは必ずしも正しいとは限りません。大げさな患者さん、遠慮して他の愁訴は申告しない患者さん、虚偽の申告をする患者さんetc。特にここ関西では、ズケズケ根性の強者おばちゃんもいますし。
 午前中の患者さんは医者からもらった薬の副作用に「半身麻痺が発生するかも知れない」と書いてあったそうですが、それは怪しいですよね。その話をそっくり院長に伝えてくる助手。
 いつも「情報はねじ曲げてはいけないが、情報は整理しなさい」と繰り返しているのに、これでは言葉に振り回されて本当の治療にはたどり着けません。

オーストラリアで夏期研開催!?

 ちょっと先走って記事を書いてしまいますけど、漢方鍼医会の二十周年は第二十回夏期研と同時だと思っていたなら夏期研が一階だけスキップしている年がありまして、つまり今年が第十七回夏期研でしたけど漢方鍼医会としては十八年目になります。
 それで第二十回夏期研に二十周年記念行事では強引すぎますから、今後のことも考えて無理に数字は合わせないことになりました。これは決定です。
 そうしたならオーストラリアから毎年参加してもらっている二人の先生に話が飛んで、オーストラリアでセミナーを開催しようではないか!と盛り上がって先ほどスカイプ会議が終了したところです。
 是非とも実現させたいですね。

揉みすぎて炎症を起こした患者さん

 年に数例は来院されるのですが、「ちょっと痛みがあるから」と安易に家庭用マッサージ器で揉んで気持ちがいいからと長時間やり続けていたなら、ひどい痛みになってしまったという患者さんです。
 これは自分で炎症を引き起こしてしまったのであり、発生してしまった熱を除去せねばなりません。しかし、強制排除という都合のいい方法はないので遠隔部へ熱を導くような標治法がポイントとなります。一番やっかいなのはプロのマッサージ師が揉んでしまったもので、炎症の度合いが強すぎて転げ回るほどの痛みになっていることもあります。
 今日の患者さんは昨日に来院されたのですけど、痛みはほとんど消失して鈍痛程度になっていましたが、熱が内部までこもっているので微熱状態であり全身倦怠が残っていました。

頭内共鳴

 頭鳴とは耳管炎のことであり、文字通り中耳に貫通してくる耳管が炎症を起こしているものです。
 症状としてはお釜をかぶったような感じとなり平衡感覚がおかしいとか、どこからか音が聞こえてきたりします。素人さんが耳鳴りと訴えられているのは、実は80%以上も頭鳴のことであり、これは治癒が見込めます。ちなみに本当に耳鳴りであれば、完全治癒は難しいですね。
 これに加えて頭内共鳴を併発している人も多く、自分の喋った声が頭の中で響くのですからものすごく気持ち悪い。
 しかし、治療側としては頭内共鳴があれば頭鳴と判断できるので、治療には逆に取りかかりやすいものです。証はその他の症状により、様々です。

四十九難を用いる一つの目安

 概ねは井穴か栄火穴になると思われますけど、陰経へ営気の手法を行うことにより邪を除外するという治療法の四十九難であり、ピタリと来た時にはたった一本で驚くほど脉状も全身も変化してくれます。
 ところが、どのようなケースが四十九難で治療できるのかの判断基準が難しい。だから「難経」なのでありますけど。
 現時点で判断基準としているのは、病症をどの経絡の変動として考えればいいのかの振り分けができない時、四十九難を治療候補として採用すると確立がいいようです。
 事務員さんなのですがいつもは整体へ通っていたのに、今回はどうしてもひどい肩こりとそこからの頭痛がスッキリしないとのこと。冷えなどの症状もありますが、流注もハッキリせず病症が経絡の配当に当てはまりません。肝経の行間へ営気の手法を行うことで、その場でスッキリしてきました。

初めての運動会だったのに

 五歳の長女が通う幼稚園での運動会が予定されていたのですけど、自分の行事よりもずっと天気予報が気になっていたのに大雨で中止になってしまいました。
 我が家の子供では初めての運動会でしたからお父さんも感染してあげねばと、色々と考えて土曜日ですけど午前中は仕事を休んだのに・・・。
 早い時間に予約の取れなかった患者さんには、とても申し訳ないことをしてしまいましたが、天候のことですからどうしようもありません。
 休んでいた午前中には、私は歯医者へ行ってました。

手術後に首の痛みの残る患者さん

 舌癌の手前の状態で、舌の右四分の一くらいを切除する手術を受けた患者さんです。転移はなく、リンパ節の切除はしていないらしいです。傷口は回復しているとのことであり、顎やその周囲に痛みの後遺症が残ると説明は聞いていたとのことです。
 ところが、痛みが激烈で食事どころかつばを飲み込むのもつらく、いくら薬を変えてもらっても痛みが止まりません。以前に虫垂炎手術後の癒着が回復したことを思い出して来院されました。
 肺虚肝実証で本治法を行うと頚部の腫れが見事に小さくなり、邪を払うことで熱も取れてきました。ただし、下顎の大きな硬さには変化がありません。注意して治療を進めていきます。

今日はこちらが眠い

 先日は爆睡を通り越すほど眠る患者さんが時々おられることを書きましたけど、今日はこちらの方が夕方は眠くて何度も椅子に座ったなら知らない間に瞬間的に寝ていました。
 「この症状のためには運動を」と患者さんに申し渡そうとしても治療側が運動不足では説得力も何もないので泳いだりランニングしたりしているのですが、子供が小さいので夜にスポーツプラザへ出向くことを許してもらえませんから昼休みに現在は通っています。
 時間が限られている中で運動をしてくるので午後は心地よい疲れが抜けないこともありますけど、昼寝をパスしたことで眠気に襲われる時には罪悪感を少し感じています。

点字の電子手帳

 これだけパソコンが発達した現代ですから、点字も専用エディタを使ってデータ化されており、さらには小さなピンが上下することにより点字として読めるピンディスプレイという機器もあります。
 つまり、パソコン上では音声で読み上げてくれて触読する時にはピンディスプレイでと、点字の世界の方がペーパーレスで運用されていたりします。
 そのピンディスプレイなのですが、携帯型のものがあって電子手帳並みの付属ソフトもあり、仕事上必要ですからこの春に二代目のブレイルメモに乗り換えました。
 初代のものでさえ隅々まで使いこなしたとはとても言えないのに劇的にコマンドが増えていて、とりあえず仕事に必要な部分だけマスターして使っていたのですけど改めてマニュアルと照らし合わせながら一つ一つ検証していると、「こんなに便利だったんだ!」と感動の嵐なのであります。
 今日は仕事の隙間は、ほとんどこの作業に費やしています。

腰痛と風邪の患者さん

 以前に腰痛から股関節痛にもなって動けない状態となり、仕方なく実家に帰省してきて家族に引率されて来院した患者さんです。
 今回は一週間前から風邪をひいて咳き込んでいるうちに腰痛が発生し、股関節も痛み始めてきたので以前のようになっては大変と大阪の勤務先から自ら帰省して来院されました。
 ところが脉状が明らかな沈で数。胸には熱がこもり顔も火照っていて、陽虚証での風邪ですから通常なら風邪の治療と腰痛の治療を分けるべきです。
 しかし、通院は困難なので時間を掛けてできる限り腰痛の治療も。本治法は陽経から大腸経の温溜に営気の手法のみで行いました。

とても眠たい患者さん

 「にき鍼灸院」では、本治法と標治法の間に半時間ほどそのまま寝て休憩してもらっています。これはあちこちの古典に経絡は一日に五十周すると記されていますから、経絡が一周するには概ね半時間程度必要だという計算からです。
 この半時間で患者さん自らの自然治癒力が高まるだけでなく、眠たくなりかなりの方は睡眠状態になっておられます。治療側としても並行して他の治療が可能になるだけでなく、標治法が少なくできるのですからリスクも少なくなります。
 今日の午前中の患者さんもそうだったのですが、時々爆睡を通り越すほどの睡眠となり治療が終了してもまだ眠たさが抜けないということもありますけどね。

瀉法鍼とは?

 先程のエントリーで瀉法鍼を膝蓋骨の周囲に打ち込むと書きましたけど、瀉法鍼とはおそらく私の周囲にしかもう存在していない用具です。いや、今使っている形態の物は私の周囲だけでしょう。
 発案されたのは皮内鍼の赤羽先生で、赤羽先生は皮内鍼が補法になると考えてその反対側に瀉法を加えればよりバランスが取れるということで、この用具を考案されたと思います。
 形状としては一寸の鍼管の中にかなり太いステンレスの鍼がわずかに突起が出る長さで治まっているというもので、刺鍼されませんがかなりの衝撃を与えることもできます。
 ということで、衝撃を与えることにより強制的に血を動かせる用具として使い続けています。同時に気が抜けてしまいますから、施術後にはローラー鍼で表面を撫でて、気をコーティングし直しています。

半月板損傷の患者さん

 半月板損傷の患者さんは、年間でいえば住人近くは来院されます。午前中にも年輩の男性が来院されていました。
 半月板損傷とはご存じのごとくで、膝蓋骨そのものが大腿四頭筋の中に浮遊している種子骨なのですけど、さらにその下側にクッションとして入っている軟骨である半月板に物理的な傷が発生しているものです。
 診断方法としては膝蓋骨を大きく手のひらで垂直に圧迫した時、膝蓋骨の下側(裏側)に痛みを感じるかどうかです。
 治療は本治法がそのほとんどの鍵を握っているのですけど、標治法としては瀉法鍼を膝蓋骨の周囲に打ち込みます。画像診断で真っ二つになっていたとしても、今まで治癒率100%の疾患です。

発熱の中学生、その後

 思わず堅い話題を連続で登校してしまったので、臨床室の身近な話題も。
 昨日の発熱で節々が痛み登校できないという中学生ですが、たまたま弟と妹が小児鍼で来院したのでお母さんに様子を尋ねることができました。
 昨日は夜まで発熱は続いていたものの全くの平気であり、風邪の感染源である友人はまだしんどそうだったと笑っていたとか。今朝は解熱して元気に飛び出していったそうです。果たして劇のできばえは?

医療関係者は鍛錬を怠るな!

 前回のエントリーの最後で「それは逆の健康被害のなにものでもないでしょう」と書いたのですが、iPS細胞が個人別に大量かつ速効で精算されるようになったならそれは医療の世界ではなく単なるテクノロジーの世界となってしまいます。
 漢方では生老病死と表現されているように、この世に生を受けてから年齢とともに色々と症状はありながらも次の世代へと命をつないでいく、それこそが生命体としての自然の姿であると説かれています。
 自然な姿をぶちこわしては、自ら種族の存続を危うくさせてしまうでしょう。漢方医学は、そのようなことを決して臨んではいません。
 追加した「適切な手法の時間について」のビデオの中でも離していますけど、客観的な評価ができる方法により手法の適否と長さについて修練できる方法は開発できましたが、修得は研修会に参加し事故修練を繰り返さねばなりません。医療関係者は鍛錬を怠るな!です。

iPS細胞の画期的作製法、米ハーバード大開発

 深夜なのですがこういう時間帯でないと子供に邪魔されてしまうので、どうしても研修会で必要なメーリングリスト設置に関してマニュアルを読んでいました。ちょっと休憩にニュースを読んでいたなら、表記の記事が目に止まりました。
 iPS細胞は最近の報道でご存じのように、あらゆる組織へ変化させられる万能細胞のことです。今までその増殖にはDNAをウィルスに運ばせていたらしいのですが、これをRNAに運ばせることにより遺伝子が傷つくリスクがなくなり癌の心配もなくなるとのことです。
 画期的な技術なのでしょうけど、本当にその方向の研究だけでいいのでしょうか?例えば「虫歯になったから抜いて新しい歯を生えさせよう」などとなったなら、これ以上はない根本的治療家も知れませんけど歯を大切にする人はいなくなってしまいます。
 大量生産で大量にゴミを排出する経済構造を作ってしまったのですけど、その大量にでてくるゴミに悩まされていますよね。大量に頻繁に臓器を入れ替えることにでもなったなら、それは逆の健康被害の何ものでもないでしょう。

発熱の中学生

 昨日の夕方から風邪症状が出てきて、夜には発熱していて今朝からは節々が痛くてとても登校ができないという中学の男子生徒です。
 明日が文化祭であり、劇では出番は少ないもののとても重要な役があるということでどうしてもこれから最後の仕上げに学校へ行きたいということですから、朝の予約時間の前に臨時で診察をしました。
 こんな時に鍼灸治療を頼りにしてくれていること、とても嬉しいですね。もちろん元気に学校へむかいました。

予約のオーバーブッキング

 こちら側の記載ミスだったり患者さんの勘違いだったり、あるいは予約をせず来院される急患さんがいたりしてベッドが足りないオーバーブッキング状態にしばしば遭遇します。
 今日の午前中にはこちらの記入ミスで一日ずれて来院された患者さんと、一ヶ月も間違われて来院された患者さんがおられて冷や汗。
 ラッキーというのか何というのか、偶然にも午後へ予約を変更して欲しいという患者さんがおられたので空いたポケットへ押し込むことができましたけど、いつもは気合いで回転数を上げるしかないのであります。

ていしんでも「やり過ぎ」?

 先程のエントリーで、ていしんを用いることで「やり過ぎ」が防げるようになったとは書きましたけど、ていしんなら絶対にやり過ぎが発生しないかといえば答えはNoです。
 ズバリ書いてしまえば、ていしんを臨床投入できるようになっていたなら同時に「やり過ぎ」にもなっているでしょう、私がそうだったのですから。
 問題は手法の時間が長すぎることです。これについては間もなく、ホームページの動画でご覧頂けるようになります。

五十肩の痛み

 五十肩の治療で一番困るのは、夜間痛が激しいのでこれを何とかせねばならないことです。開業当初は局所へ皮内鍼をしたりなど、苦労したことを覚えています。
 深く刺鍼すると必ず失敗することは当時から分かっていたのですけど、これを解消してくれたのは難経七十五難型の肺虚肝実証の治療ができるようになってからです。
 さすがに初回から著効が発揮されたというケースは少ないものの、以前は自発痛を押さえるのに四回は掛かっていたものが最近は三回程度で済んでいます。ていしんを用いることで「やり過ぎ」が防げている印象です。

残便感の強い患者さん

 二十代後半の女性だったのですが、高校時代より残便感が強くて困っているとのことでした。けれど食べ過ぎるとすぐ下痢にもなるとのことです。
 色々と診察をしてみると、胸には熱がなく津液も不足しているのに頻尿だと分かってきました。病理考察としては、津液が保持できないので自己防衛で残便によって体温保持をしているのでしょう。
 証はまず気血津液の生産を高めお血を処置するということで脾虚肝実証。この証が長く続くかは分かりませんが、治療後は全身が温かくなり津液が全身に巡ってきました。
 

腰椎分利症の治療

 腰椎分利症の特徴としては、痛みが腰椎付近に限局していることと痛みを感じる日と全く感じない日が数日おきに交代することです。
 解剖学の所見とは異なりますけど、腰椎と腰椎の間隔が広くなったような触診所見があれば症状と合わせて腰椎分利症と判断してまず間違いありません。
 腰椎が分離しているので筋肉が引き締めようとして、引き締められている間は痛みを感じなくなるのですが、筋肉が疲れてしまうと分離状態となり痛みを感じるというプロセスの繰り返しをしています。
 ですから治療としては筋肉を強化するのか腰椎を何とかするのか・・・、いえいえ、本治法の後には衛気と営気の手法を適宜加える、それだけです。

小児鍼での脉状判断は?

 小児鍼専用ベッドを設置してから小児の治療がとてもスムーズになっているのですが、今日の午前中は予後についての話を多くしなければなりませんでした。
 小児であっても脉診は必須であり、脉状は充分に判断できます。しかし、脉差診によって証決定するようなことはしていませんし、ちょっと難しいのではとも思っています。
 では、どのようにして予後を判断しているかですけど、まずは太い脉状になること。渋らないこと、そして寸関尺の触れ方が均一になることを以前から目標としています。

寒くなりましたが、手法は?

 台風の影響は滋賀県では受けていないはずなのですけど、強風で昨日よりも気温以上に体感温度がぐっと下がっています。
 急に寒くなると手法の時間も長くしなければならないのではと頭では想像してしまうのですけど、ほとんど関係ありませんね。
 むしろ陽気を飛ばしてしまわないように、衛気の手法ではいつもより短時間にすべきかも知れません。営気の手法でも、少しでも時間が長すぎると脉が開いてしまいます。

早速ガスファンヒーター指導

 ホームページの「にき鍼灸院見学ツアー」をビデオでご覧の方はおわかり頂けますように、美座らのある玄関ホールと待合室の間のドアは夏は開けっぱなしになっています。これは玄関ホールがサウナ状態にならないようにするためです。逆に冬場はオートクローザーで自動的にドアが閉まるようになっており、待合室の暖房効率を高めさせています。
 さすがの猛暑も秋分の日を境に見事に気温が下がったのでオートクローザーが働くように設定変更した今日、同時に引っ張り出してきたガスファンヒーターを運転させられるとは。
 こちらのミスで昼休みに窓を全開させていたからではありますけど、それにしても渋った脉状の人も目立ちましたね。